日本経済新聞は2026年8月26日、政府と日本銀行がブロックチェーンを用いて国債・株式の資金決済を24時間即時に完結させる次世代決済インフラの整備に着手すると報じた。金融庁・財務省・日銀・金融機関などが参加する検討会を今夏に立ち上げ、2027年初にも整備計画をまとめるという。銀行が日銀に預ける当座預金の一部をトークンに変換する構想で、日銀はこれをいわゆるホールセールCBDCと説明している。稼働は2030年代前半の可能性とされる。当局の正式発表は9月4日時点で確認できていない。
何が起きたか
報道によれば、検討会には金融庁、財務省、日銀、金融機関などが参加し、利用するブロックチェーンの設計、政府・日銀と民間銀行の役割分担、今後の作業工程を議論して2027年初にも整備計画をまとめる。導入方針が正式に決まれば数年後に運用を開始でき、2030年代前半に稼働する可能性があるとされる。日銀当座預金のトークン化を含む整備事業は、政府が2027年度予算から創設を予定する複数年度にわたる戦略分野への投資枠の対象になる可能性もあるという。
構想の中核は、銀行が日銀に預ける当座預金の一部を、ブロックチェーン上で流通するトークンに変換することにある。日銀当座預金は金融機関が日銀に保有する預金で、金融機関同士の資金決済に用いられる中央銀行マネーである。日銀はトークン化された当座預金をいわゆるホールセールCBDCと説明しており、個人や店舗での利用を想定する一般利用型CBDCとは利用主体も用途も異なる。導入に向けた具体的な日程が固まるのは初めてだと報じられている。
なぜ重要か
本セッションで並べて扱った韓国と豪州の動きは、いずれも同じ問いに向かっている。韓国は第3段階でステーブルコインを決済手段とするオンチェーン決済を置き、豪州は既存の即時グロス決済と分散型台帳の同期を諮問した。日本の構想は、日銀当座預金そのものをトークン化するという点で最も中央銀行マネーに踏み込んだ設計である。証券会社や信託銀行にとって重要なのは、決済の器が変われば照合業務と担保管理の前提が変わることである。稼働が2030年代前半でも、設計の分岐が2027年初に固まるのなら、参加の可否と接続方式の検討は来年度の課題になる。
注視点
当局の正式発表はなく、検討会の設置自体も9月4日時点の公表資料では確認できていない。金融庁の報道発表資料にも該当する掲載はない。参加者の範囲、開催時期、議事の公開の有無はいずれも未確定である。2027年度予算の投資枠の対象になるかどうかも「可能性」として報じられており、決定ではない。金融庁の2026事務年度金融行政方針は9月4日時点で未公表で、公表されれば本構想の位置づけを確認する材料になるとみられる。
進捗段階
規制トラック①に達していない構想・報道段階。当局の一次発表がなく、検討会の設置も確認できていない。実装トラックは⓪である。
用語解説
- 日銀当座預金:金融機関が日本銀行に保有する預金。銀行間の資金決済における最終的な決済資産であり、準備預金制度の受け皿でもある。現在は日銀ネットを通じて営業時間内に決済される。
- ホールセールCBDC:金融機関間の大口決済に用いる中央銀行デジタル通貨。日銀はトークン化された当座預金がこれに当たると説明している。一般利用型CBDCと異なり、個人は直接保有しない。
- 日銀ネット:日本銀行金融ネットワークシステム。当座預金の振替と国債の振替を扱う。稼働時間が定められており24時間ではないため、24時間即時決済にはシステムだけでなく運用体制の見直しが必要になる。
- 即時グロス決済(RTGS):個々の取引をネッティングせず、その都度最終的に決済する方式。日銀ネットもこの方式を採る。取引ごとに決済が完結するため、流動性を厚く持つ必要がある。
出典
- 日本経済新聞「国債や株、即時決済可能に 政府・日銀がブロックチェーン整備へ始動」(2026年8月26日): https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB056AP0V00C26A8000000/
- あたらしい経済「日本政府と日銀、国債・株式の即時決済へブロックチェーン基盤整備。日銀当座預金をトークン化=報道」(2026年8月26日): https://www.neweconomy.jp/posts/602317
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