NEWS日本実装①実証実験(PoC)2026-10-08

三井住友銀行など9社、信託型ステーブルコインでSTの同時決済を実証 「Project Trinity」フェーズ2完了

デジタル証券の売買代金を、預金トークンではなく信託型ステーブルコインで払う道筋が実地で試された。残る問いは、実証の先に誰が本番の決済網を引き受けるかである。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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三井住友銀行、SBI証券、大和証券など9社は10月6日、セキュリティトークン(ST)の二次流通取引をステーブルコインでDvP決済する実証「Project Trinity」のフェーズ1・2を終えたと発表した。2026年4月から9月に、SBI VCトレードのST社債と三井住友銀行の信託型ステーブルコインで、証券会社間の2件の取引を決済した。証券会社間の決済手段を選ぶ材料が加わったが、9社は次の段階を約束していない。

何が起きたか

本プロジェクトは2025年8月に8社で始まり、今回SBI VCトレードを加えた9社で結果を公表した。フェーズ1では業務要件を定義し、フェーズ2で実際に発行した証券と決済手段を使って業務運用を検証した。SBI VCトレードが自己私募で発行したST社債を、大阪デジタルエクスチェンジのST取引市場「START」での売買を想定し、SBI証券と大和証券の間で2件譲渡した。代金には、三井住友銀行が発行する特定信託受益権型(第3号電子決済手段)のステーブルコインを使った。ST基盤と社債原簿の管理はProgmatが担い、異なるブロックチェーンにまたがるSTとステーブルコインを結ぶ技術はProgmatとDatachainが提供した。検証では通常の決済に加え、ステーブルコインの購入と償還、残高不足や照合不一致が起きた場合の処理も試した。設定した範囲では期待どおりの結果が得られ、約定の2営業日後に同時決済する方式(T+2/DvP)の実現可能性を、法務・技術・業務運用の各面で「一定程度」確認したとしている。

なぜ重要か

国内のST市場では、証券の受け渡しはブロックチェーン上で一瞬で終わる一方、代金は銀行振込で別に動いている。片方だけが履行される元本リスクが残り、大口取引の拡大を妨げてきた。4月にはSBI証券ら6社がトークン化預金「DCJPY」で同じ課題を検証しており、今回の結果で、預金型と信託型ステーブルコイン型の両方に実証の裏付けがそろった。証券会社にとっては、受け取る代金が銀行預金の残高か信託受益権かで、会計処理、顧客資産の分別管理、日中の流動性の手当てが変わる。STを扱う証券会社と、決済手段を発行する銀行・信託銀行は、どちらの方式に接続するかを判断する時期に近づいている。

注視点

課題として挙げられたのは、複数のST基盤と決済手段が混在する本番環境で、決済時限内に安定して処理できる体制である。フェーズ3の時期や本番への移行条件は示されていない。3メガバンクが2026年度中に実取引を始める共同ステーブルコインが、証券会社間の決済に使われるかどうかが次の分かれ目になる。

進捗段階

実装トラック ①(実発行のSTとステーブルコインを使った実証。反復的な取引や既存決済の置き換えには至っていない)

用語解説

  • DvP(Delivery versus Payment):証券の引き渡しと代金の支払いを同時に行い、片方だけが実行される事態を防ぐ決済方式。上場株式や国債では清算機関と日銀ネットがこれを担保している。STの二次流通ではまだ仕組みが整っておらず、本実証が埋めようとしている空白である。

    • 英:Delivery versus Payment (DvP) / 用例:The banks tested DvP settlement so that tokens and payment move at the same moment. (各行は、トークンと代金が同時に動くDvP決済を検証した)
  • 特定信託受益権型ステーブルコイン(第3号電子決済手段):信託銀行等が預かった円を裏付けに、信託の受益権として発行するステーブルコイン。資金移動業型と異なり1回あたりの送金上限がなく、企業間の大口決済に向く。今回の実証では三井住友銀行が発行体となった。

    • 英:trust-type stablecoin / 用例:A trust-type stablecoin has no per-transfer cap, which suits large interbank settlements. (信託型ステーブルコインには送金ごとの上限がなく、銀行間の大口決済に向いている)
  • クロスチェーン:異なるブロックチェーンの間で資産や情報を連携させる技術。証券と代金が別々のチェーンに載る場合、両者を同時に動かすには、それぞれの台帳の状態を確かめ合う仕組みが要る。本実証ではProgmatとDatachainがこの部分を担った。

    • 英:cross-chain / 用例:Cross-chain technology linked the bond token and the stablecoin on separate ledgers. (クロスチェーン技術が、別々の台帳にある社債トークンとステーブルコインを結びつけた)
  • 元本リスク:証券か代金のどちらか一方だけを渡し、相手から反対給付を受け取れずに元本全額を失うリスク。決済のタイミングがずれるほど大きくなる。DvPはこのリスクを構造的になくすための仕組みである。

    • 英:principal risk / 用例:Without DvP, a seller faces principal risk if the buyer never pays. (DvPがなければ、買い手が支払わない場合に売り手は元本リスクを負う)

出典

  • SBIホールディングス「セキュリティトークンのセカンダリーマーケット(二次流通市場)取引におけるステーブルコインを活用したDvP決済にかかる実証プロジェクト『Project Trinity』フェーズ2(業務運用検証)までの実証完了」(2026年10月6日): https://www.sbigroup.co.jp/news/2026/1006_16649.html
  • 三井住友銀行ほか「セキュリティトークンのセカンダリーマーケット(二次流通市場)取引におけるステーブルコインを活用したDvP決済に係る実証プロジェクト開始」(2025年8月22日): https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20250822_01.pdf
  • CoinPost「三井住友銀など9社、デジタル証券セカンダリー取引でDvP決済を実証完了」(2026年10月6日): https://coinpost.jp/?p=741289
  • NADA NEWS「三井住友銀行など9社、ステーブルコインでデジタル証券の同時決済を実証」(2026年10月6日): https://www.nadanews.com/371056/
  • SBIホールディングス「国内初のトークン化預金によるセキュリティトークン決済の実発行検証の完了のお知らせ」(2026年4月24日): https://www.sbigroup.co.jp/news/2026/0424_16270.html

本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-08

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