NEWSシンガポール実装③本番稼働(限定領域)2026-10-06

シンガポールのDigiFT、フィデリティの米国債MMFをトークン化して提供開始

米国債で運用するMMFのトークンは、ステーブルコインの準備資産と同じ中身を、利回り付きでブロックチェーン上に持つ手段になっている。今回は、シンガポールの認可取引所がその受け皿を広げた。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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シンガポール金融通貨庁(MAS)の認可を持つDigiFTは2026年10月6日、フィデリティ・インベストメンツが運用する米国債MMFへの投資を、機関投資家と適格投資家向けにトークンの形で提供すると発表した。ファンドは現金と短期の米国債で運用し、米GENIUS法のステーブルコイン準備資産の基準に沿うとしている。日本の金融機関にとっての論点は、トークン化MMFを担保や準備資産の受け皿として使う流れが、アジアの規制下の場でも広がっていることだ。対応する台帳や申込の手段は未公表である。

何が起きたか

DigiFTは、MASから資本市場サービス免許と、認定市場運営者の認可を受けている。今回のトークンは、同社にとって42本目のトークン発行で、これまでに決済した申込の総額は4億3,500万ドル(約687億円、三菱UFJ銀行の2026年10月6日公示仲値1ドル=157.96円で換算)を超えたという。フィデリティのデジタル資産運用の責任者は、トークン化には投資商品への接近を広げ、新しい形の流動性や担保としての使い道を生む可能性があると述べた。発表文は、ファンドの正式な名称、対応するブロックチェーン、ステーブルコインで申込や解約ができるかどうかを明らかにしていない。対象となる投資家は、同社が定める基準を満たす機関投資家と適格投資家に限られる。

なぜ重要か

MMFのトークンは、ブロックチェーン上で利回りのある資産を持ちたい投資家の、待機資金の置き場として広がってきた。米国債と現金で運用するファンドは、ステーブルコインの準備資産とほぼ同じ中身であり、ステーブルコインからMMFへ、またその逆へと資金を移す経路ができつつある。フィデリティのような大手の運用会社が、自社で販売の場を作らず、海外の認可取引所を販売の窓口に使う点も特徴である。日本の運用会社や信託銀行にとっては、自社のファンドをトークン化して海外で販売する際に、販売先の範囲や、担保としての受け入れをどう設計するかの参考になる。とりわけ、自社のファンドを海外の投資家の担保として使わせる場合は、評価や解約の手続きを24時間の取引に合わせられるかが課題になるとみられる。

注視点

第一に、対応するブロックチェーンと、ステーブルコインで申込や解約ができるかどうか。第二に、このトークンを担保として受け入れる取引所や貸借の場が出てくるか。第三に、日本の投資家が利用できるかどうかで、現時点では同社の基準を満たす投資家に限られる。

進捗段階

実装トラック:①(提供の開始を発表したが、残高や利用の実績は公表されていない) 規制トラック:対象外

用語解説

  • MMF(マネー・マーケット・ファンド):短期の国債や預金など、安全性と換金性の高い資産で運用する投資信託。値動きが小さく、現金に近い資産として、企業や投資家の待機資金の置き場に使われる。米国では大きな市場を持ち、規制で運用対象の質や満期が制限されている。

    • 英:money market fund (MMF) / 用例:The money market fund invests only in cash and short-dated Treasuries. (このMMFは、現金と短期の米国債だけで運用する)
  • トークン化MMF:MMFの持分を、ブロックチェーン上のトークンとして記録・移転できるようにしたもの。24時間の移転や、ほかのデジタル資産との即時の交換がしやすくなる。担保として差し入れる用途も広がっているが、法的な権利の記録がどこにあるかは商品ごとに確認が要る。

    • 英:tokenized money market fund / 用例:Traders can post a tokenized money market fund as collateral on some venues. (一部の取引の場では、トークン化MMFを担保として差し入れられる)
  • 認定市場運営者(RMO):シンガポールで、取引所ほどの規模を持たない市場を運営するためにMASから受ける認可。認可を受けた者は、限られた参加者を相手に証券などの取引の場を提供できる。DigiFTは、この認可の下でトークン化資産の取引の場を運営している。

    • 英:recognised market operator (RMO) / 用例:As a recognised market operator, DigiFT serves only eligible investors. (認定市場運営者として、DigiFTは条件を満たす投資家だけを相手にする)
  • 準備資産(GENIUS法):ステーブルコインの発行者が、発行額と同じ価値の裏付けとして持つ資産。米GENIUS法は、現金、預金、短期の米国債などに対象を限っている。今回のファンドは、この基準に沿った資産で運用しているとされる。

    • 英:reserve assets / 用例:The fund holds the same kind of reserve assets the GENIUS Act requires. (このファンドは、GENIUS法が求めるのと同じ種類の準備資産を持つ)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-06

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