NEWSその他制度①案の公表・意見募集2026-09-10

フィリピン中銀、決済事業者の新規登録を12カ月停止する規制案 暗号資産の加盟店決済も締める

参入を一度止めて分類をやり直す。アジアの一角で、決済ライセンス制度そのものを見直す動きが出た。日本からの送金の受け皿にも跳ね返る。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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フィリピン中央銀行(BSP)が、決済システム運営者(OPS)の新規登録の受付と審査を12カ月間停止する規制案を公表した。案は「決済取引における健全性統制の強化に関する規則」と題され、決済システム規則集を改正するもので、レモロナ総裁が署名している。停止の目的はOPSの分類体系と免許制度、付随するリスク管理・規制上の論点を包括的に見直すことにある。あわせて、暗号資産事業者向けの加盟店獲得業務に対し、直接契約の義務づけ、強化された顧客確認、継続的モニタリング、取引・決済の上限が課される。

何が起きたか

規制案によれば、停止措置は最終的な規則が官報または一般紙に公表されてから15暦日後に発効する。停止期間中、未登録の事業者は新たに決済システムの運営を開始できない。停止前に提出された申請は審査を継続できるものの、最終的な承認・不承認の判断は12カ月の期間終了まで留保される。既存の登録事業者は業務を継続できる。BSPが見直しの対象とするのは、加盟店アグリゲーター、プラットフォーム、仲介者、プールされた決済構造、複数階層の加盟店対応など、責任の所在が曖昧になりやすい構造である。報道によれば8月28日時点で登録済みのOPSは314社にのぼる。暗号資産関連では、規制対象金融機関が既存の加盟店関係を6カ月以内に点検し、さらに6カ月以内に不備を是正することが求められる。BSPは2026年前半にも、監督下の金融機関に対し適切に認可された暗号資産事業者とのみ取引するよう指示し、フィリピンの規制当局に登録していない海外事業者への個人の直接アクセスを制限していた。

なぜ重要か

アジアの規制が一様に緩和方向ではないことを示す事例である。日本の金融機関にとって直接の影響が出るのは、フィリピン向け送金と現地の決済事業者を経由するスキームである。同国は日本からの送金の主要な仕向地のひとつであり、ステーブルコインを用いた送金を検討する場合、着金側の受け皿となる決済事業者の免許が新規に取得できない状態が1年続くことになる。既存事業者との提携に選択肢が絞られ、交渉上の立場は相対的に不利になる。加えて、加盟店獲得業務における直接契約の義務づけは、多段階の仲介を前提としたスキーム設計そのものを組み替える必要を生じさせる。

注視点

第一に、案が最終規則として発出される時期と、そこで停止期間や適用除外が変わるかどうかである。現時点では草案であり、最終的な文言は変更されうる。第二に、12カ月の見直しの結果として、どのような分類体系と免許区分が示されるか。ここで暗号資産関連の決済がどの区分に置かれるかが、その後の事業設計を規定する。第三に、同種の措置が他のアジア諸国に波及するかどうかである。

用語解説

  • 決済システム運営者(OPS):フィリピンで、支払いや資金移動を可能にする仕組みを運営する事業者の総称。電子ウォレット、加盟店と決済網をつなぐ事業者などが含まれる。国家決済システム法に基づきBSPが監督する。
  • 加盟店獲得業務(マーチャント・アクワイアリング):加盟店を募り、その決済を受け付けて資金を渡す業務。仲介者やアグリゲーターが多段階で入ると、最終的な加盟店が誰でどんな事業を行っているかの把握が難しくなり、資金洗浄対策上の弱点になりやすい。
  • 暗号資産事業者(VASP):暗号資産の交換、移転、保管などを業として行う事業者。フィリピンではBSPと証券取引委員会が免許・登録を所管しており、今回の案はこれらの事業者に決済サービスを提供する側の統制を強化するものである。
  • モラトリアム(登録停止):新規の免許・登録の受付を一時的に止める措置。制度の見直しが必要と判断された場合に用いられ、既存事業者の地位には影響しない一方、新規参入者にとっては市場が閉じることを意味する。
  • 強化された顧客確認(EDD):通常の本人確認より踏み込んだ確認手続き。事業内容、資金の出所、実質的支配者などを追加で確認するもので、リスクが高いと判断された取引先に適用される。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-10

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