NEWS米国実装①実証実験(PoC)2026-09-11

ナスダック、クラーケン親会社に1億ドル出資 発行体中心のトークン化株式「NET」は2027年4〜6月期に始動見込み

上場市場の運営者が、暗号資産取引所の流通網を自らのトークン化株式の販路として資本で結び付けた。株主の権利を保ったまま株式を「閉じないレール」に載せる構想に、初めて時期の目安が付いた。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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米ナスダックは2026年9月10日、戦略投資部門を通じて暗号資産取引所クラーケンの親会社ペイワードに1億ドル(約153億8,500万円)を出資すると発表した。両社は株式トークン化の枠組み「NET」の開発を続けて2027年4〜6月期の始動を見込み、ペイワードはナスダックの市場監視技術を導入する。日本の証券会社・取引所には、株主権を伴うトークン化株式が暗号資産取引所を販路に流通し始める時期の目安となる。対象銘柄、提供地域、規制上の位置づけは未公表である。

何が起きたか

発表の柱は三つある。第一に出資で、ナスダックは両社が進める協業の戦略的な性格を反映したものと位置づけた。第二にNETの継続開発である。ナスダックは今年、NET構想と、ペイワードのトークン化株式基盤「xStocks」と接続する枠組みを公表しており、次の段階では世界的な流通、売買、決済後処理の機能を整えるとした。始動は2027年4〜6月期を「見込む」という表現で、確定した日程ではない。第三に市場監視契約で、ペイワードは暗号資産、株式、トークン化株式、先物、オプションの各取引所にナスダックの監視技術を導入する。ナスダック社内では、常時稼働の市場インフラを担う部門「デジタル・リクイディティ・ネットワークス」が協業を主導する。Ledger Insightsによれば、ペイワードには4月にドイツ取引所も既存株の取得として2億ドル(約307億7,000万円)を投じている。円換算は1ドル=153.85円(2026年9月10日ニューヨーク市場終値、筆者換算)。

なぜ重要か

「トークン化株式」には、発行体が関与せず価格だけを追う商品と、発行体の関与のもとで株主権を保つ商品が混在している。ナスダックは今回も「発行体中心」を明言し、後者の側に立つ。上場市場の運営者が監視技術まで持ち込む点に、暗号資産取引所の既存商品と一線を画す狙いが読み取れる。日本でも上場株式のトークン化は業界横断で検討されているが、振替制度との接続や税制が論点として残る。海外で先行する発行体関与型の株式トークンが国内投資家に届く経路をどう扱うかは、証券会社の商品戦略と当局の双方に早晩問われると考えられる。

注視点

NETが米国の証券規制上どの枠組みで提供されるのか、米国外のどの法域で流通を認めるのかが最大の未確定事項である。対象銘柄の範囲と、発行体の同意をどう取り付けるかも示されていない。米国では上院のクラリティー法の審議入り採決が9月15日に予定され、SECの暗号資産向け規則案も意見募集中である。これらの帰結が、始動時期の実現性を左右するとみられる。

用語解説

  • 発行体関与型トークン化株式:株式を発行する企業自身が関与し、議決権や配当などの株主権をトークン保有者に確保する形のトークン化株式。第三者が株式を保有してその価格に連動するトークンを発行する方式とは、法的な権利の中身が大きく異なる。どちらの方式かで、投資家保護の水準と規制上の扱いが決まる。
  • 市場監視(サーベイランス):相場操縦やインサイダー取引などの不公正取引を検知するため、注文と約定を常時分析する仕組み。取引所が上場市場の信頼を支える中核機能であり、暗号資産取引所ではこの水準の整備が課題とされてきた。
  • xStocks:ペイワード傘下の事業が提供するトークン化株式の基盤。米国上場株式に連動するトークンを、ブロックチェーン上で売買・移転できるようにしている。
  • 決済後処理(ポストトレード):約定後に行われる清算、決済、保管、権利処理などの業務の総称。トークン化の効率化効果が最も大きいとされる領域で、ここを台帳上で完結させられるかが実用化の鍵となる。
  • 常時稼働市場:夜間・休日を含めて24時間取引と決済が可能な市場。既存の証券決済は営業日と締め時刻に縛られるが、ブロックチェーン上の台帳は原理的に止まらないため、トークン化の主要な訴求点になっている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-11

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