NEWS日本制度⓪検討・研究2026-10-01

財務省、「国債のオンチェーン対応に関する研究会」を設置 10月8日に初会合、年明けまでに論点整理

国債の決済をブロックチェーンに載せる検討を、発行体である国自身が始めた。問われているのは技術ではなく、翌営業日決済という慣行を変える損得である。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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財務省は9月30日、「国債のオンチェーン対応に関する研究会」を設けると発表した。理財局次長が主催し、学識者を中心とする有識者5人が参加する。日本銀行と金融庁はオブザーバーとして加わり、初会合は10月8日に開く。国債の決済を約定の翌営業日から即時に近づけた場合の利点と欠点を洗い出す場で、証券会社・信託銀行・銀行の国債決済事務と担保管理に直接かかわる。報道によれば、2026年12月から2027年1月をめどにそれまでの議論を整理する予定だが、具体的な制度変更や実証の計画は示されていない。

何が起きたか

報道によると、研究会の委員は東京大学大学院の加藤貴仁教授、加毛明教授、柳川範之教授、早稲田大学の篠潤之介准教授の学識者4人と、市場実務家としてオールニッポン・アセットマネジメントの森田長太郎チーフストラテジストの計5人である。事務局は理財局の国債企画課と国債業務課が務める。会議は非公開で、議事要旨と配布資料は後日公表される。ロイターによれば、財務省幹部は、米国で国債を裏付けとするMMF(マネー・マーケット・ファンド)がブロックチェーン上で取引されている事例を参考にすると述べている。同じ日に金融庁が開いたオンチェーン金融フォーラムの説明資料でも、財務省の担当として、国債などのトークン化対応と、元利金の支払いを投資家の求めに応じてオンチェーンで行えるようにする検討が挙げられている。研究会の設置は、この政府全体の工程の一部と位置づけられる。

なぜ重要か

国債は、銀行の流動性管理、日銀の資金供給オペ、レポ取引(債券を担保にした短期の資金貸借)の担保として、金融システムの中心にある。現在は約定の翌営業日に決済され、この1日の間は相手方が決済できなくなるリスクと、それに備えた資金と担保の手当てが生じる。即時決済になれば担保の回転が速まり、日中の資金繰りの余裕が広がる。一方で、約定と同時に資金を用意する必要があり、各社がネッティング(売買の差額だけを受け渡す処理)で抑えてきた資金負担は増えうる。すでに民間では、みずほと三菱UFJのグループが国債担保取引のオンチェーン化の実証を始めている。発行体の財務省が制度側の論点を持つことで、こうした民間実証が本番の決済につながる道筋ができる。

注視点

第1回の配布資料で、検討の範囲が流通市場の決済に限られるのか、発行・元利払いまで含むのかを確認したい。振替制度との関係も論点で、ブロックチェーン上の記録を法的な権利の記録とみなすには、社債等振替法の整理が避けられない。日銀の当座預金をオンチェーンで使えるようにする検討と日程が噛み合うかも重要である。資金の側が整わなければ、国債だけをオンチェーンに載せても同時決済は実現しない。

進捗段階

制度トラック ⓪(検討会の設置段階。論点・方針は未提示)

用語解説

  • T+1決済:約定日の翌営業日に証券と資金を受け渡す慣行。日本の国債はT+1、株式はT+2で決済される。約定から決済までの間は相手方が履行しないリスクが残るため、清算機関や担保でこれを管理している。

    • 英:T+1 settlement / 用例:Japanese government bonds currently settle on a T+1 basis, one business day after the trade. (日本国債は現在、約定の翌営業日に決済されるT+1で運用されている)
  • レポ取引:債券を担保にして資金を短期で貸し借りする取引。金融機関の日々の資金繰りと国債の需給調整を支えている。決済が即時化すれば、同じ国債を1日に何度も担保として回せるようになる。

    • 英:repo transaction / 用例:Faster settlement would let banks reuse the same bonds several times a day in repo transactions. (決済が速くなれば、銀行は同じ債券を1日に何度もレポ取引で使い回せる)
  • ネッティング:複数の売買の受け払いを相殺し、差額だけを決済する処理。必要な資金と証券の量を大きく減らせる。即時の個別決済に移ると、この効果が小さくなる点が即時化のコストになる。

    • 英:netting / 用例:Instant settlement can reduce the liquidity savings that banks currently gain from netting. (即時決済は、銀行が現在ネッティングで得ている資金の節約効果を小さくしうる)
  • 振替制度:国債や社債などを紙の証券を発行せず、振替機関と口座管理機関の帳簿(振替口座簿)で管理する仕組み。国債は日本銀行が振替機関を務める。ブロックチェーン上の記録を権利の正本とするには、この帳簿との関係を法的に整理する必要がある。

    • 英:book-entry transfer system / 用例:Legal questions arise when a blockchain record must coexist with the book-entry transfer system. (ブロックチェーンの記録が振替制度と並存する場合、法的な論点が生じる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-01

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