NEWSグローバル実装①実証実験(PoC)2026-09-27

Swift、Wells Fargo、DCJPYのディーカレットDCPがLF Decentralized Trustに加盟──チェーン間の相互運用とトークン基盤を、オープンソースで標準化する動き

複数の台帳がつながる時代に、つなぎ目の技術を誰が持つかが問われ始めた。国際送金網と米大手銀行、国内のトークン化預金の担い手が、特定企業に属さない開発の場に加わった。

BY OFM Research · 6 MIN READ

SHARELB!

Linux財団傘下のLF Decentralized Trust(LFDT)は2026年9月24日、Swift、Wells Fargo、トークン化預金「DCJPY」を運営するディーカレットDCPなど15者の新規加盟を発表した。あわせて、チェーン間の相互運用基盤「Hyperledger Cacti 3.0」と、中銀デジタル通貨の実証で使われたトークン基盤「Panurus」を公開した。中核部品がオープンソースかどうかは、銀行の委託先管理に関わる。実際に銀行の本番環境で採用されるかどうかが焦点となる。

何が起きたか

LFDTは9月24日、15者の新規加盟を発表した。内訳は一般会員12者と準会員3者で、Swift、Wells Fargo、Zeeveは再加盟となる。準会員には、ブラジル中銀の職員団体連合Fenasbacなどが加わった。ディーカレットDCPのCEO兼COOの平子氏は、トークン化預金が世界の金融の基盤になるには、相互運用性、強固なセキュリティ、中立で厳格なコンプライアンスが欠かせないとコメントしている。技術面では、Hyperledger Cacti 3.0を公開した。個別の接続部品の集まりから、チェーン間の相互運用のための汎用基盤に作り替えた、同プロジェクトで最大の更新である。Hyperledger FabricのToken SDKから発展したトークン基盤Panurusも、正式な育成段階のプロジェクトに加わった。LFDTによれば、Panurusはすでに複数の市場の中銀デジタル通貨プロジェクトで使われている。このほか、Hederaが提供した、ブリッジを介さずに台帳どうしが互いの状態を検証する通信プロトコル「CLPR」を、研究段階のラボとして受け入れた。

なぜ重要か

トークン化預金やトークン化証券が複数の台帳に分かれて発行されるほど、台帳をつなぐ層の重要性は増す。その層を特定の企業の製品に頼るか、共同で開発するオープンソースに置くかは、銀行にとって選択の問題になる。オープンソースであれば、提供者を切り替えたり、自行で保守したりする道が残る。委託先管理や、撤退時の計画を説明するうえで有利になる。同じ日に、米英の銀行間の層に同じ1社の技術が採用されており、二つの流れは対になっている。国内の銀行がトークン化の基盤を選ぶ際にも、中核の部品が誰のもので、どう保守されるかを確かめる必要がある。

注視点

翌週のSibos(国際的な金融業界会議)で、加盟各社から具体的な発表があるかが第一の焦点である。DCPがどのプロジェクトに関わるのかも確認したい。Cacti 3.0やPanurusが、銀行の本番環境で採用されるかどうかもあわせて見ておきたい。

進捗段階

実装トラック:対象外(団体への加盟とソフトウェアの公開で、個別の実装は伴わない。Panurusの中銀プロジェクトでの利用は、LFDTの説明による) 規制トラック:対象外

用語解説

  • オープンソース:ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを公開し、誰でも利用・改良・再配布できるようにする開発方式。特定の企業に依存しにくく、複数の利用者が保守の負担を分け合える。金融機関にとっては、提供者が撤退しても自ら保守を続けられることが利点になる。

    • 英:open source / 用例:Open source interoperability tools reduce a bank's dependence on one vendor. (オープンソースの相互運用ツールは、銀行の特定企業への依存を減らす)
  • チェーン間相互運用:異なるブロックチェーンや台帳の間で、資産やデータ、メッセージを安全にやり取りすること。トークン化した証券と預金が別々の台帳にある場合、同時決済にはこの機能が要る。国際送金で異なる国の決済網をつなぐ仕組みの、台帳版といえる。

    • 英:cross-chain interoperability / 用例:Cacti 3.0 aims to standardize cross-chain interoperability for financial institutions. (Cacti 3.0は、金融機関のためにチェーン間相互運用を標準化することを目指す)
  • ブリッジ:異なるブロックチェーンの間で資産を移すための仕組み。多くは、元の台帳で資産をロックし、移転先の台帳で対応するトークンを発行する。ロックした資産が狙われやすく、過去には大規模な流出事件がたびたび起きている。

    • 英:bridge / 用例:CLPR is designed to move messages across ledgers without a bridge. (CLPRは、ブリッジを使わずに台帳間でメッセージを送るよう設計されている)
  • ベンダーロックイン:特定の提供者の製品に依存し、ほかの製品への乗り換えが難しくなる状態。乗り換えの費用が高くなるほど、価格や条件の交渉で不利になる。金融機関の委託先管理では、撤退時の計画とあわせて評価される項目である。

    • 英:vendor lock-in / 用例:Banks weigh vendor lock-in when choosing a shared tokenization platform. (銀行は共通のトークン化基盤を選ぶ際、ベンダーロックインを考慮する)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-27

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。