韓国金融委員会は2026年9月4日、民官合同トークン証券協議体の第3回会合で「トークン証券政策方向」を公表した。2026年2月の改正電子証券法はトークン証券を「分散原簿登録株式等」として制度化しており、2027年2月4日に施行される。FSCは今回、トークン証券は証券の内容ではなく形態による区分だと整理し、株式や社債などの既存の定型証券も分散型台帳で発行すればトークン証券になると明示した。日本は権利の類型としてトークン化を捉えており、設計の起点が異なる。
何が起きたか
金融委員会は9月4日午前10時、韓国預託決済院ソウル事務所で民官合同トークン証券協議体の第3回会合を開いた。参加者は金融委員会副委員長(主宰)、金融監督院、韓国預託決済院、金融保安院、金融投資協会、フィンテック産業協会、および学界・法曹界の民間専門家である。第1回は3月4日、第2回は5月15日に開かれ、今回はこれまでの議論を総合した政策方向を公開した。
公表資料でFSCは、トークン証券は証券の内容ではなく形態による区分だと整理した。債務証券・持分証券・受益証券・投資契約証券などの内容上の区分は資本市場法が規律し、実物証券・電子証券・トークン証券という形態上の区分は電子証券法が規律する。したがって小口投資証券でも従来の電子証券として発行すればトークン証券ではなく、株式や社債などの定型証券もトークンの形態で発行すればトークン証券になる。両者はいずれも電子的方法で証券口座簿を作成し電子証券法に従うが、トークン証券は分散型台帳を口座簿として用い、発行・流通情報は台帳に参加する預託決済院や証券会社が共同で記載・管理する。
なぜ重要か
日本では2020年5月施行の改正金商法が「電子記録移転権利」等の概念を導入し、権利の類型としてトークン化を捉えた。韓国の整理は切り口が異なり、権利の中身は資本市場法、記録の器は電子証券法という二層構造をとる。形態で切れば、既存の株式や社債をそのままトークン化しても新しい商品類型は生まれず、既存の業規制と開示規制がそのまま及ぶ。日本の証券会社や信託銀行が日韓で同種の商品を並行して組成する場合、どちらの区分が働くかを事前に読み分ける必要がある。
注視点
政策方向のうち下位法規に関わる事項は、9月末に資本市場法と電子証券法の下位法規改正案として立法予告され、意見募集にかけられる。トークン証券の発行が認められる証券の範囲もここで確定するため、9月末の予告内容が実質的な射程を決める。権大栄(クォン・デヨン)副委員長は冒頭発言で、発行から取引・清算・決済・権利行使までの価値連鎖全体をひとつのデジタル資本市場として結ぶと述べたが、清算・決済の具体的な設計は資料に示されていない。
進捗段階
規制トラック②(制度の詳細設計段階)。法改正は成立済みで施行日も確定しているが、下位法規は未公表であり、発行可能な証券の範囲は9月末の立法予告を待つ段階にある。
用語解説
- 分散原簿登録株式等(분산원장등록주식등):2026年2月の改正電子証券法がトークン証券に与えた法令上の名称。「トークン証券」は市場での通称で、法文上は分散型台帳に電子登録された株式等を指す。日本の「電子記録移転権利」に近い位置づけだが、権利ではなく記録の形態を捉えている点が異なる。
- 電子証券法(전자증권법):韓国で証券の電子登録制度を定める法律。日本の社債株式等振替法に近い役割を担う。今回の改正で、従来の中央集中型の電子登録に加えて分散型台帳による登録が認められた。
- 資本市場法(자본시장법):韓国の金融投資商品を包括的に規律する法律で、日本の金商法に相当する。証券の内容上の区分と、金融投資業の認可体系を定める。今回、トークン証券専用の認可体系は設けられなかった。
- 韓国預託決済院(KSD):韓国の電子登録機関であり中央証券預託機関。日本の証券保管振替機構に相当する。トークン証券でも電子登録機関として位置づけられ、証券会社が構築する分散型台帳との接続審査を担う。
- 小口投資証券(조각투자증권):不動産や音源などの資産、または事業から生じる収益を多数の投資家で分け合う商品。非金銭信託受益証券と投資契約証券の2類型がある。韓国ではサンドボックスを通じて先行実施されてきた。
出典
- 韓国金融委員会「トークン証券政策方向発表-民官合同トークン証券協議体第3回会合開催」(2026年9月4日): https://www.fsc.go.kr/no010101/87650
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。