NEWS米国実装③本番稼働(限定領域)2026-10-01

ゴールドマンの米国債MMF、アバランチ系の決済網「Lynq」で提供開始 ファンドはトークン化せず販路だけをオンチェーンに

トークン化しなくても、既存のファンドをオンチェーンの決済網に載せることはできる。ゴールドマンの選択は、国内の運用会社にとって設計の選択肢を1つ増やした。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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米証券会社のtZEROは9月28日、ゴールドマン・サックスの米国債MMF「FTIXX」を、アバランチ技術を使った許可型の決済網「Lynq」経由で、米国の適格な事業者が購入・解約できるようにしたと発表した。報道によれば運用資産は約1,000億ドル(約15.7兆円、1ドル=157.38円で筆者換算)だが、ファンドはトークン化されていない。国内の運用会社や信託銀行には、受益権をトークン化せずにオンチェーンの顧客へ販路を広げる方法として参考になる。担保利用や二次流通はできず、利用規模も未開示である。

何が起きたか

tZEROの発表によると、同社は自社のブローカー・ディーラー機能を使い、Lynqのリアルタイム決済網を通じてFTIXXへのアクセスを提供する。Lynqは、アバランチの技術で作られた参加者限定のブロックチェーン(L1)上で動く機関投資家向けの決済網で、tZERO、TassatとArcaが共同で構築した。アバランチの公式アカウントによれば、B2C2、Wintermute、Galaxy、FalconX、Fireblocksなど30社超の暗号資産関連の機関が利用している。報道によれば、FTIXXはLynqで扱う初めての外部の商品で、商品数としては2つ目となる。LynqのCEOは、顧客が購入するのは既存ファンドの通常の機関投資家向け持分であり、トークンではないと説明している。想定する用途は、暗号資産の取引会社が取引の合間に持つ待機資金を、遊ばせずに米国債MMFの利回りで運用することである。

なぜ重要か

これまでのトークン化MMFは、ブラックロックのBUIDLのように、ファンドの持分そのものをトークンとして発行する方式が中心だった。この方式では、持分をチェーン上で自由に移転したり、担保として差し入れたりできる。その代わり、受益権の移転をブロックチェーンの記録で行うための法的な整理や、移転先の投資家の適格性を確認する仕組みが必要になる。ゴールドマンは持分をトークン化せず、決済網の側に接続した。そのため、ファンドの規制上の扱いを変える必要がない。日本の運用会社や信託銀行が同じことを考える場合、トークン化するかどうかと、オンチェーンの顧客に販路を持つかどうかは別々に判断できることになる。いきなり受益権のトークン化から入るのではなく、決済網への接続から始めて需要を確かめる段階を踏むこともできる。

注視点

実際にどれだけの資金がLynq経由でFTIXXに入るかは開示されていない。将来ゴールドマンが持分そのものをトークン化し、担保として使えるようにするのかも未定である。今回の購入・解約の資金決済が法定通貨で行われるのか、ステーブルコインやトークン化預金を経由するのかも、公表資料からは確認できない。

進捗段階

実装トラック ②(適格な事業者向けに提供開始。ただしファンド持分はトークン化されず、利用規模は未開示)

用語解説

  • MMF(マネー・マーケット・ファンド):短期の国債や短期金融商品で運用する投資信託。元本の変動が小さく、すぐに解約できるため、企業や金融機関の待機資金の置き場として使われる。オンチェーンでは、ステーブルコインに近い使い勝手で利回りを得る手段として注目されている。

    • 英:money market fund (MMF) / 用例:Trading firms can park idle cash in a Treasury money market fund between trades. (取引会社は、取引の合間の待機資金を米国債MMFに置いておける)
  • トークン化ファンド:投資信託の持分(受益権)をブロックチェーン上のトークンとして発行したもの。持分をチェーン上で移転したり、担保として差し入れたりできる。移転を法的に有効にするための整理と、移転先の投資家資格の確認が課題になる。

    • 英:tokenized fund / 用例:Unlike a tokenized fund, the shares here remain conventional and cannot move freely on-chain. (トークン化ファンドと異なり、この持分は従来型のままでチェーン上を自由に移動できない)
  • 許可型L1:参加者を運営者が限定した、独立したブロックチェーン(レイヤー1)。アバランチでは、同じ技術で目的別のチェーンを個別に立ち上げられる。機関投資家向けでは、参加者の本人確認を前提にできる点が採用の理由になる。

    • 英:permissioned layer 1 / 用例:Lynq runs on a permissioned layer 1 built with Avalanche technology. (Lynqは、アバランチの技術で作られた許可型のレイヤー1上で動いている)
  • ブローカー・ディーラー:米国で証券の売買仲介や自己売買を行うために登録を受けた業者。日本の第一種金融商品取引業者に近い。証券であるファンド持分を暗号資産関連の顧客に販売するには、この登録を持つ事業者を介する必要がある。

    • 英:broker-dealer / 用例:A registered broker-dealer handles subscriptions and redemptions for eligible firms on the network. (登録ブローカー・ディーラーが、ネットワーク上の適格事業者の購入と解約を取り扱う)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-01

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