金融庁は9月11日、金融サービス利用者相談室が令和8年4月1日から6月30日までに受け付けた相談等の状況を公表した。暗号資産(仮想通貨)等に関するものは1,374件で、前期の1,466件から92件減、前年同期の1,450件からも76件減った。全分野15,418件に占める割合は9%である。要因別では「個別取引・契約の結果に関するもの」が991件で暗号資産関連の72%を占めた。投資商品等と暗号資産等のうち詐欺的な投資勧誘に関するものは1,961件あり、うち1,616件で何らかの被害が生じていた。
何が起きたか
今期の相談等の総受付件数は15,418件で、前期の15,765件から347件減り、ほぼ同水準となった。分野別では投資商品等が5,603件(36%)で最も多く、預金・融資等が4,089件(27%)と続く。暗号資産等の1,374件(9%)は、貸金等の669件や資金移動・前払式支払手段等の182件を上回る。暗号資産等の要因別内訳では、個別取引・契約の結果が991件で突出し、次いで行政に対する要望等が158件だった。業界団体を紹介した相談等は228件である。金融庁は受け付けた情報を庁内で共有し金融モニタリングに活用しているとし、今期の活用事例に「暗号資産交換業者における不適切な顧客対応に関するもの」を挙げた。
なぜ重要か
この統計が示すのは、暗号資産に関する利用者からの接触が、制度や手続きへの照会ではなく、損失が生じたあとの相談に偏っているという構造である。72%という比率は、同じ期の預金・融資等(個別取引・契約の結果が27%)や投資商品等(同31%)と比べて際立って高い。暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者にとって、これは苦情対応の前段階である説明態勢の水準が問われていることを意味する。加えて、金融庁が活用事例に交換業者の顧客対応を明記したことは、この相談データが実際にモニタリングの入口になっていることを示す。詐欺的な投資勧誘1,961件のうち1,616件で被害が生じているという数字は、投資商品等と暗号資産等を合算したものであり暗号資産単独の内訳ではないが、8割超が被害に至っている点は、銀行の口座管理や振込時の注意喚起にも関わる。
注視点
件数の減少が、利用者保護の改善によるものか、相談窓口以外への流出によるものかは、この統計だけでは判別できない。金融庁は無登録業者への警告書発出を続けており、9月1日にはIzakaya Limitedに対し無登録の暗号資産交換業で、9月11日にはBit Hills Inc.に対し無登録の貸金業で警告書を出している。これらが次期以降の相談件数にどう表れるかが、実効性を測る材料になる。年齢別の内訳は別紙に示されており、高齢層への偏りがあるかは今回の本文では確認していない。
用語解説
- 金融サービス利用者相談室:金融庁が設置する一元的な相談窓口。電話・ウェブ・郵送で質問や意見を受け付け、助言や紛争解決機関の紹介を行う。あっせん・仲介・調停は行わない。
- 要因別分類:相談内容を「個別取引・契約の結果」「行政に対する要望等」「一般的な照会・質問」などに分ける区分。何が相談のきっかけになったかを示し、単純な件数より実態を読み取りやすい。
- 暗号資産交換業者:資金決済法に基づき登録を受け、暗号資産の売買・交換・管理を業として行う事業者。無登録での営業は禁じられ、金融庁は警告書の発出と公表を行っている。
- 金融モニタリング:金融庁が金融機関の業務運営を継続的に把握・検証する監督活動。相談室に寄せられた情報は庁内の関係部局に回付され、ヒアリングや検証の材料として使われる。
出典
- 金融庁「「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:令和8年4月1日~同年6月30日)」(令和8年9月11日): https://www.fsa.go.jp/soudan/2026soudan04-06/2026_04-06.html
- 金融庁「「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:令和7年4月1日~同年6月30日)」: https://www.fsa.go.jp/soudan/2025soudan04-06/2025_4-6.html
- 金融庁「報道発表資料」(無登録業者に対する警告書の発出): https://www.fsa.go.jp/news/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。