NEWS米国実装③本番稼働(限定領域)2026-10-03

米Fiserv、金融機関向けデジタル資産基盤が本番稼働──ノースダコタ州銀行の「Roughrider Coin」を州内90超の銀行・信用組合が銀行間の資金移動に利用

地域の銀行がステーブルコインを使うのに、自前のシステムはいらないかもしれない。勘定系の大手ベンダーが、銀行が使い慣れた法人向けの画面の中にそれを組み込んだ。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

米国の金融システム大手Fiservは2026年10月1日、金融機関向けのデジタル資産基盤が本番稼働したと発表した。最初の利用は、州営のノースダコタ州銀行が導入したドル建てステーブルコイン「Roughrider Coin」で、州内の90を超える銀行と信用組合が、Fiservの法人向けオンラインバンキングを通じて銀行間の資金移動に使う。日本の地域金融機関にとっては、ベンダーの基盤を通じてステーブルコインに参加する経路の先行例となる。取引量や利用料はまだ公表されていない。

何が起きたか

Fiservの発表によれば、Roughrider CoinはVersaBankが発行し、発行と償還、保管、準備資産の運用を同社が担う。米ドルと1対1で連動する設計である。取引はソラナ上で処理され、デジタル資産の管理とトークン化の技術はFireblocksが提供する。参加する銀行と信用組合は、Fiservの法人向けオンラインバンキング「Commercial Center」から利用する。ノースダコタ州銀行は、州内の地域銀行や信用組合の中心となる州営の銀行で、今回の取り組みを主導した。同行のドン・モーガンCEOは、州内の銀行間ネットワークで資金をより効率的に動かす新しい手段になると説明している。Fiservは今後、この基盤で、ステーブルコインを使ったカードの発行、国際送金、プログラムで条件を組み込んだ決済、資金管理の自動化にも対応するとしている。同社はこの稼働を、構想から本番への移行と位置づけている。

なぜ重要か

日本の地方銀行の多くは、勘定系を共同センターやベンダーに委ねている。そのため、ステーブルコインやトークン化預金に参加できるかどうかは、各行の判断以前に、ベンダーが機能を用意するかに左右される。Fiservは、新たな画面や口座を作らず、既存の法人向けの画面に組み込む形を選んだ。地域の中心となる銀行が旗を振り、ベンダーが基盤を用意し、発行は別の銀行に任せるという分業は、日本の地銀が共同でステーブルコインに関わる形を考える材料になる。ただし発表から読み取れる利用者は金融機関に限られ、個人や企業の顧客が直接使う形は示されていない。

注視点

銀行間の利用が、従来の送金手段を置き換えるほどの量に育つかが第一の焦点である。他州の銀行への展開や、カード・国際送金への拡大の時期も見ておきたい。日本の共同センターのベンダーが、同様の機能を用意するかも注目される。

進捗段階

実装トラック:①(本番の基盤で銀行間の利用が始まった段階。取引量は公表されておらず、既存の送金手段を置き換えているかは確認できない) 規制トラック:対象外

用語解説

  • 勘定系システム:預金の入出金や振込、利息の計算など、銀行の基幹業務を処理するシステム。多くの地域銀行は自前で持たず、ベンダーや共同センターのシステムを共同で使う。新しい決済手段を扱えるかどうかは、このシステムの対応に左右される。

    • 英:core banking system / 用例:Community banks rely on their core banking system provider to add stablecoin features. (地域銀行は、ステーブルコインの機能の追加を勘定系システムのベンダーに頼っている)
  • 州営銀行:州政府が所有する銀行で、米国ではノースダコタ州銀行が代表例である。州の資金を預かり、州内の地域銀行や信用組合と協力して資金を供給する。日本の政府系金融機関や、地銀の連合の中核機関に近い役割を担う。

    • 英:state-owned bank / 用例:The state-owned bank led the launch for its partner community banks. (その州営銀行が、提携する地域銀行のために立ち上げを主導した)
  • 発行体:ステーブルコインを発行し、準備資産を管理して、償還に応じる主体。今回の発行体はVersaBankで、旗振り役のノースダコタ州銀行とは別である。発行と配布を分けることで、配布する側は準備資産の管理の負担を負わずに済む。

    • 英:stablecoin issuer / 用例:VersaBank acts as the stablecoin issuer and manages the reserve assets. (VersaBankがステーブルコインの発行体として、準備資産を管理している)
  • 銀行間決済:銀行どうしの間で資金を受け渡すこと。通常は中央銀行の当座預金や決済システムを通じて行われ、時間帯や処理の回数に制約がある。ステーブルコインを使えば、参加する銀行の間で常時、即時に資金を動かせる可能性がある。

    • 英:interbank settlement / 用例:Roughrider Coin gives North Dakota banks a new tool for interbank settlement. (Roughrider Coinは、ノースダコタ州の銀行に銀行間決済の新しい手段を提供する)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-03

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。