NEWS欧州実装③本番稼働(限定領域)2026-09-24

ECB「Pontes」稼働、トークン化資産の資金決済を中銀マネーで──初日は13の参加者と4つのDLT基盤が接続

トークン化市場に欠けていた「信用リスクのない決済資産」を、中央銀行が自ら用意した。問われるのは、民間のステーブルコインやトークン化預金との役割分担である。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

ユーロシステムは2026年9月21日、分散型台帳(DLT)上のトークン化資産の大口取引を中央銀行マネーで決済する仕組み「Pontes」の運用を始めた。初日に接続準備を終えたのは、ドイツ銀行やサンタンデールなど13の市場参加者、ドイツ連邦銀行、ClearstreamなどDLT基盤の運営者4社である。日本の金融機関にとっては、トークン化証券の資金決済を何で行うかという設計論点に、欧州が一つの答えを示した形になる。当初は中核機能のみで、全面実装は2028年の見込みである。

何が起きたか

ECBの発表によれば、Pontesは市場側のDLTプラットフォームとユーロシステムの決済基盤TARGETサービスを接続し、トークン化資産取引の資金側を中銀マネーで完結させる。出発点は2024年にユーロシステムが実施したDLT決済の試験で、参加者から「リスクのない決済資産へのアクセスが普及の鍵」との声が出たことだという。初期の市場参加者はドイツ銀行、サンタンデール、ソシエテ・ジェネラル、KfW、欧州投資銀行など13者で、DLT運営者としてAxiology、Cashlink、Clearstream、SWIATが加わる。ほかの参加者も今後数か月で接続する予定とされる。ECBは同日、自己資金の一部をトークン化証券に投資する準備を始めたとも公表した。当初の対象はユーロ圏の公的部門と欧州の国際機関が発行するユーロ建て証券で、決済はPontesで行う。

なぜ重要か

トークン化証券の普及を阻んできたのは、技術より決済資産の問題だった。証券をブロックチェーンに載せても、資金側を商業銀行の預金や民間ステーブルコインで決済すれば発行体の信用リスクが残り、大口の機関投資家は受け入れにくい。Pontesは中銀が自らその穴を埋めた例で、ECBが投資家として加わることで初期の需要も用意した。日本では、トークン化預金やステーブルコインを使ったDvP(証券と資金を同時に受け渡す仕組み)の実証が民間主導で進むが、日銀当座預金をDLT取引の決済にどう使うかは示されていない。国債や社債のトークン化を検討する証券会社や信託銀行にとって、資金側の選択肢に中銀マネーが入るかどうかは、基盤選定とコスト試算の前提を変える。

注視点

機能と稼働時間は段階的に広げるとされ、全面実装は2028年である。追加参加者の接続時期と、決済の件数や金額が公表されるかが次の焦点になる。DLT基盤どうしの連携を扱うAppia構想も2028年に青写真をまとめる予定で、Pontesとの関係を確認したい。日本銀行が同種の仕組みに言及するかにも注目したい。

進捗段階

実装トラック①(本番環境は稼働を始めたが、実取引の件数・金額と反復性は未公表のため②の要件は確認できない)

用語解説

  • 中央銀行マネー:中央銀行が発行する現金と、銀行が中央銀行に預ける当座預金のこと。発行主体が破綻しないため、決済に使っても相手の信用リスクが生じない。大口の資金決済が最終的にここで完結するのはこのためで、日本では日銀当座預金がこれにあたる。

    • 英:central bank money / 用例:Pontes lets tokenised trades settle their cash leg in central bank money. (Pontesは、トークン化取引の資金側を中央銀行マネーで決済できるようにする)
  • TARGETサービス:ユーロシステムが運営する決済基盤の総称で、大口資金決済のT2、証券決済のT2S、即時決済のTIPSなどからなる。PontesはこのTARGETサービスと市場側のDLTをつなぐ橋の役割を担う。日本の日銀ネットに相当する位置づけである。

    • 英:TARGET Services / 用例:The bridge links market DLT platforms with TARGET Services. (この橋は、市場のDLTプラットフォームとTARGETサービスを接続する)
  • ホールセール取引:金融機関や市場インフラなど、プロの参加者どうしの大口取引。個人の支払いを扱うリテール取引と区別される。ECBはリテール向けにはデジタルユーロを別に検討しており、Pontesは対象をホールセールに限っている。

    • 英:wholesale transactions / 用例:Pontes serves wholesale transactions, not retail payments by households. (Pontesはホールセール取引を対象とし、家計のリテール決済は扱わない)
  • オンボーディング:新しい参加者が決済システムに接続するための審査、契約、技術試験などの手続き。完了して初めて実際の取引に参加できる。発表は「利用可能になった」参加者を示すもので、取引実績を示すものではない点に注意したい。

    • 英:onboarding / 用例:An initial group has completed onboarding and can start using the service. (最初のグループは接続手続きを終え、サービスの利用を始められる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-24

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。