NEWS欧州実装②限定実装(パイロット)2026-08-28

ECB、DLT決済基盤「Pontes」を年内稼働へ 中銀マネーでのトークン化決済が料金表を持つ常設サービスに

中央銀行マネーをオンチェーン取引の決済に使う構想が、実験から料金表を持つ常設サービスへ移る。欧州はその第一弾を年内に立ち上げる。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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CB理事のピエロ・チポローネ氏は2026年8月26日、分散型台帳(DLT)上の取引を中銀マネーで決済する基盤「Pontes」を年内に稼働させると述べた。初期の利用者負担は一時金のオンボーディング料のみとし、運用時間を営業日あたり22.5時間へ延ばしたうえで、2028年央に24時間365日運用と複数通貨対応を目指す。同氏は、所有権や決済ファイナリティの法制がEU域内で分断されたままなら、技術的な相互接続だけでは市場統合は完成しないと述べた。稼働日そのものは特定されていない。

何が起きたか

Pontesは、市場のDLTプラットフォームとユーロシステムの決済基盤TARGETサービスを接続する仕組みである。資金レグの最終決済は中銀マネーで行われ、同期化により、DvP(証券の引渡しと代金の支払を相互に条件づける決済)など全部成立か全部不成立かを要する取引を可能にする。当初のファイナリティは資金移動が既存システムT2に反映された時点で成立し、将来はユーロシステムのDLT上での即時ファイナリティへ移る。料金体系は8月19日公表の価格ガイドで示す。長期構想「Appia」は、標準・ガバナンス・法制を含む設計図を2028年に示す。

公開ブロックチェーン上に記録される伝統的資産は、2025年3月末の47億ユーロから2026年3月末の233億ユーロ(約4,311億円。1ユーロ=185円で筆者換算)へ約5倍に増えた。欧州側の分断は、EU域内に証券集中振替機関が31あることと、2023年に取引の95%超が件数・金額の両方で同一機関内で決済された事実で示されている。

なぜ重要か

日本では、日銀が中央銀行マネーのトークン化を検討する方針を示した段階にある。ECBは要件と料金を確定させ、稼働時期を切る段階に進んだ。この差は国内のセキュリティトークン(ST)決済の設計に効く。国内のST決済は民間のトークン化預金や信託型ステーブルコインが担う前提で進み、中銀マネーの選択肢が当面ない。決済資産の選択は、信用リスクを発行銀行に置くか公的部門に置くかの選択でもある。

もう一点、Pontesは民間の決済資産どうしの相互転換も担うとされる。銀行間でのトークン化預金の移転や、ステーブルコインの法定通貨決済をDLT上で直接行う想定である。円建てステーブルコインが複線化する日本で、発行体間をつなぐ受け皿をどこに置くかという論点に、欧州は公的インフラで答えを出そうとする。

注視点

稼働日の確定が第一の焦点となる。専門メディアは9月稼働と報じているが、講演では年内としか述べられていない。次に、接続する市場DLTプラットフォームがどこまで揃うか。制度面では、DLTパイロット制度の恒久化法案の審議とMiCA見直しの帰趨が利用量を左右する。

進捗段階

実装トラック①(開発・準備完了、稼働前)。 要件定義と料金表の公表まで進み、稼働時期は年内と表明されたが、本稿執筆時点で稼働は未確認である。実取引の処理実績は示されていない。②以上に進むには、実際の証券取引の資金レグが中銀マネーで決済され、それが反復的に行われることが必要になる。

用語解説

  • Pontes(ポンテス):ユーロシステムが構築中の、DLT上の取引を中銀マネーで決済するための接続基盤。市場側の台帳と中銀側の決済システムを別々に保ったまま両者を同期させる方式を採る。すべてを1つの台帳に統合するのではなく、既存インフラを残しつつ橋を架ける発想である。
  • TARGETサービス/T2:ユーロ圏の中央銀行が運営する決済インフラの総称と、その中核をなす大口資金決済システム。日本でいえば日銀ネットの当座預金系に相当する。中銀マネーでの最終決済はここで完結する。
  • 決済ファイナリティ:決済が法的に取り消し不能となる時点のこと。DLT上で記帳が終わっても、法的にいつ確定するかが別に定まっていないと、取引の巻き戻しリスクが残る。Pontesが当初T2への反映をもって成立とするのは、この法的確実性を既存の枠組みから借りるためである。
  • DvP(Delivery Versus Payment):証券の引渡しと代金の支払を相互に条件づけ、一方が行われなければ他方も行われないようにする決済方式。従来は中央清算機関などの第三者が担保してきたが、トークン化では両レグを同期させることで機械的に成立させる。
  • ホールセールCBDC:金融機関間の大口決済に用いる中央銀行デジタル通貨。一般利用者向けのリテール型CBDCとは目的も設計も異なり、Pontesは既存の当座預金を使いつつDLTと接続する点で、新たな通貨を発行する方式とは区別される。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-28

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