オンチェーンデータ事業者のDuneは8月31日、実物資産トークン(RWA)の発行後を追跡するデータセットを公開した。258発行体による6,800件超のトークン展開を、21チェーン・8資産クラスにわたり共通のデータモデルで正規化している。初期分析では、8月24日までの4週間に金と株式のパーペチュアル取引が1,030億ドル(1ドル=160円換算で約16兆4,800億円。円換算は筆者による)に達し、オンチェーン現物出来高41億ドルの約25倍だったとする。詳細な報告書は数週間内に公表予定という。
何が起きたか
Duneが公開したのは、誰がどの条件でトークン化・発行したか、誰が保有しているか、すべての移転・売買、パーペチュアルを通じた合成エクスポージャーを含むデータセットである。公開時点で258発行体・6,800件超のトークン展開、21チェーン、8資産クラスに及ぶ。初期分析の指摘は二つ。ひとつは資産クラスごとに保有主体の性格が異なる点で、トークン化された金のおよそ30%が取引所カストディ内の顧客残高、トークン化されたクレジットの15%がDeFiレンディングで担保に差し入れられているという。もうひとつが取引の合成化で、金と株式のパーペチュアルは同社集計でHyperliquidの月間出来高の0.2%から51%へと9カ月で拡大した。
なぜ重要か
日本の証券会社や運用会社がトークン化商品の採否を検討するとき、最初に詰まるのは発行実績ではなく、発行後に何が起きているかを示す資料がないことである。国内のセキュリティトークンでも、発行残高は追えても流通の薄さを定量的に示すデータは限られてきた。今回のデータセットは保有主体の内訳と流通経路を横断で示す点で、投資委員会やリスク管理部門が求める材料に近い。より重い含意は合成化にある。現物の25倍が無期限先物で取引されているなら、価格発見は現物のオンチェーン市場では起きていない。トークン化を原資産の流動性を高める手段と説明してきた前提が、資産クラスによっては崩れている可能性を示す。
注視点
第一に、発行体の開示ではなく単一のデータ事業者による集計である点。定義と対象範囲が同社の判断に依存するため、他のアグリゲータの数値と直接は比較できない。第二に、合成取引の比率はHyperliquidという特定会場に依存しており、どこまで一般化できるかは報告書を待つ必要がある。第三に、規制当局が発行後の流通データを監督上の材料として扱い始めるか。機関側の参照が進めば、定義自体が事実上の標準になりうる。
進捗段階
産業トラック②(稼働段階)。データセットは公開され利用可能である。ただし権利移転を伴う取引基盤ではなく計測基盤であり、分析結果は同社の集計である。
用語解説
- 実物資産トークン(RWA):国債、社債、金、クレジットなど現実世界の資産を裏付けとしてブロックチェーン上に表章したトークン。保有者が得る権利は原資産の所有権とは限らず、受益権や債権であることが多いため、法的構成を確認しないと信用リスクの所在がわからない。
- 発行後市場:発行が完了した後の売買、移転、担保利用、償還を含む領域。伝統的な証券では取引所や振替機関が出来高と残高を開示するが、トークン化資産では発行のプレスリリースだけが目立ち、その後の実態を示す共通の統計が存在しないという空白が続いてきた。
- パーペチュアル(無期限先物):満期のない先物取引で、資金調達率の授受によって価格を原資産に近づける仕組み。現物を保有せずに値動きだけを取れるため、現物市場の流動性が薄い資産ほど取引がこちらに集まりやすい。
- オンチェーン現物出来高:ブロックチェーン上でトークンそのものが売買された金額。合成商品の取引高と異なり、原資産に対する実際の需給を反映する。両者を並べると、その資産のトークン化がどこまで実需に届いているかを測る目安になる。
出典
- Dune Analytics「Dune Launches RWA Dataset to Make the Tokenized Asset Market Observable After Issuance」(2026年8月31日): https://www.globenewswire.com/news-release/2026/08/31/3353276/0/en/dune-launches-rwa-dataset-to-make-the-tokenized-asset-market-observable-after-issuance.html
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