NEWS米国実装⓪合意・表明のみ2026-10-01

米DTCC、iCapitalに出資──プライベート市場の事務を共通化し、トークン化も視野に

上場株の決済を支えてきた米国の中核インフラが、非上場の資産の事務にも手を伸ばした。業務の標準がまだ定まらないプライベート市場で、標準を誰が握るかという争いに、公的な性格を持つ機関が加わる。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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米国の証券決済の中核を担うDTCCは2026年9月28日、富裕層向けのオルタナティブ投資の基盤を運営するiCapitalに戦略的に出資し、プライベート市場の業務基盤で協業すると発表した。両社の基盤をつなぎ、取引の処理や報告を効率化する。適切な場面ではDLTやトークン化の活用も探る。日本の証券会社や信託銀行にとっては、非上場の資産の事務の標準化とトークン化を一続きで考える材料になる。出資額は開示されておらず、トークン化の具体的な計画も示されていない。

何が起きたか

発表によれば、DTCCはiCapitalに戦略的な出資を行い、DTCCで富裕層・投資ソリューション部門を率いるタリア・クライン氏がiCapitalの取締役会にオブザーバーとして加わる。協業の中心は、DTCCの「Alternative Investment Product(AIP)」とiCapitalの基盤の統合である。AIPは、オルタナティブ投資の申し込みや償還、報告などの処理を標準化するDTCCのサービスである。両社は処理、データ交換、管理、報告の機能を高め、DLTやトークン化も適切な場合に探るとした。iCapitalは世界で1.2兆ドル(約189兆円)の資産の事務を担い、このうちオルタナティブ投資の基盤の資産は3,270億ドル(約51.5兆円)である。約3,900の資産運用会社と、14万4,000人の金融の専門家が利用している。報道によれば、iCapitalはDLTを使った事務処理の仕組みをすでに持ち、モルガン・スタンレーの資産管理部門が採用している。円換算は筆者が1ドル=157.60円(9月28日NY終値)で計算した。

なぜ重要か

上場株や債券では、清算と決済の仕組みが業界共通で整っている。これに対し、プライベート・エクイティや私募のクレジットなどの非上場の資産は、商品ごとに書類と手続きが異なり、手作業が多く残る。個人の富裕層への販売が増えるほど、この事務の負担は重くなる。DTCCが出資と統合を通じて関わることで、非上場の資産の事務にも業界共通の標準が生まれる可能性がある。日本でも不動産などを中心にデジタル証券の発行が進むが、発行の基盤ごとに事務が分かれ、販売する証券会社や信託銀行の負担になっている。トークン化を個別の商品の話ではなく、事務の共通化の手段として考える視点は、国内でも参考になる。

注視点

第一に、AIPとiCapitalの基盤の統合の時期と、対象となる商品の範囲。第二に、トークン化の検討が具体的な計画になるか。第三に、競合する他の基盤がDTCCとの接続を求めるかである。

進捗段階

⓪ 合意・表明のみ(実装系)

出資と協業の発表の段階で、統合の時期も、DLTやトークン化を使う範囲も示されていない。トークン化については検討の意向が示されたにとどまる。①に進むには、トークン化を使った処理の検証が具体的に始まる必要がある。

用語解説

  • DTCC(米証券保管振替機関):米国の株式や債券の清算、決済、保管を一手に担う機関の持株会社。利用者である金融機関が所有する形をとり、市場全体の共通インフラとして機能している。日本では証券保管振替機構と日本証券クリアリング機構に近い役割を担う。

    • 英:Depository Trust & Clearing Corporation (DTCC) / 用例:DTCC made a strategic investment in iCapital to modernize private market infrastructure. (DTCCは、プライベート市場の基盤を刷新するためにiCapitalへ戦略的に出資した)
  • プライベート市場:取引所に上場していない株式や債券、ファンドなどが取引される市場。プライベート・エクイティや私募のクレジット、不動産ファンドなどが含まれる。価格の情報が少なく、換金に時間がかかる代わりに、高い利回りが期待されることが多い。

    • 英:private markets / 用例:Private markets still rely heavily on manual paperwork and bespoke processes. (プライベート市場は、今も手作業の書類と個別の手続きに大きく頼っている)
  • 事後処理(ポストトレード):取引が成立した後の、照合、清算、決済、記録、報告などの業務。取引そのものより目立たないが、コストと事務のリスクの多くがここで生じる。トークン化が効率化を狙うのは、主にこの領域である。

    • 英:post-trade processing / 用例:DTCC will focus on post-trade processing, while iCapital handles front and middle-office workflows. (DTCCは事後処理に注力し、iCapitalは前工程と中間工程を担う)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-01

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