NEWSその他実装③本番稼働(限定領域)2026-10-05

ブラジルの証券保管振替機関CSD BR、BTGパクチュアルのファンド持分記録をXRP Ledgerに「ミラーリング」──法的な原簿は既存システムに残す

金融市場の基幹インフラにブロックチェーンを入れるとき、最初に何を動かすか。ブラジルの振替機関が選んだのは、権利そのものではなく、権利の記録の写しをチェーンに置くことだった。

BY OFM Research · 6 MIN READ

SHARELB!

ブラジルの証券保管振替機関CSD BRは2026年9月30日、同国の金融大手BTGパクチュアルの投資ファンドの持分の記録を、Rippleと組んでパブリックチェーンのXRP Ledger上に映す運用を始めたと明らかにした。法的な所有の記録はCSD BRのシステムに残り、チェーン上の記録は照合用の写しである。日本の振替制度を変えずにオンチェーン化を進める方法として参考になる。対象のファンドの数や金額は公表されておらず、チェーン上での直接発行に進む時期も示されていない。

何が起きたか

報道によれば、CSD BRはブラジル中央銀行と証券取引委員会(CVM)の認可を受け、証券の登録、保管、決済のシステムを運営する。今回の取り組みでは、BTGパクチュアルの一部のファンドの持分を、XRP Ledgerのトークン規格「Multi-Purpose Token」で表す。試験用の資産ではなく実際のファンドの記録を使い、承認を受けた銀行や機関は、チェーン上の写しをCSD BRの公式な記録といつでも照合できる。参加者の法的な責任は変わらないため、新たな規制上の承認は要らなかったという。利用できるのは本人確認と資金洗浄対策の要件を満たす法人と金融機関に限られ、個人は参加できない。CSD BRの商品・顧客部門の責任者は、記録のミラーリングから始めたのは、重要な市場インフラに新技術を入れるうえで最も安全で責任ある方法だからだと説明した。両社はこの段階を評価したうえで、XRP Ledger上での直接の発行と取引を検討する。候補には不動産と農業の債権を裏付けとする証券が挙がっている。一方、チェーン上のトークンを参加者が独自に移転できるのか、CSD BRの記録の変更を映すだけなのかは明らかにされていない。

なぜ重要か

証券のトークン化では、チェーン上の記録を法的な原簿とするかどうかが最大の難所になる。原簿を移すには法律や振替制度の見直しが要るためである。CSD BRの方式は、原簿を動かさずにパブリックチェーン上に検証可能な写しを置き、参加者がデータの正しさを自ら確かめられるようにする。日本では、社債や受益証券の振替は証券保管振替機構が担い、デジタル証券はその外側で発行されてきた。既存の振替の仕組みとブロックチェーンを並べて動かす段階的な道筋として、日本の振替機関や信託銀行にとって比べやすい事例である。

注視点

第一に、対象となるファンドの数と金額が開示されるか。第二に、トークンの移転が既存の記録を更新する経路になるか。第三に、直接発行の段階で、ブラジルの当局がチェーン上の記録の法的な位置づけをどう扱うかである。

進捗段階

① 実証実験(PoC)(実装系)

試験用ではなく実際のファンドの記録を使う運用だが、法的な原簿は既存のシステムに残り、チェーンは写しにとどまる。権利の移転がチェーン上で起きず、既存の処理も置き換えていないため、②の要件を満たさない。②に進むには、チェーン上での直接発行と、その記録の原簿としての扱いが必要になる。

用語解説

  • 証券保管振替機関:株式や債券、ファンドの持分などの所有の記録を一元的に管理し、売買に伴う権利の移転を帳簿上で行う機関。紙の証券を動かさずに取引を完結させる。日本では証券保管振替機構がこの役割を担う。

    • 英:central securities depository (CSD) / 用例:The central securities depository keeps the legal record while the blockchain holds a mirror. (証券保管振替機関が法的な記録を持ち、ブロックチェーンはその写しを持つ)
  • 記録のミラーリング:既存の台帳の内容を、別の台帳にそのまま写して並べて持つこと。原本を動かさないため、法的な位置づけを変えずに新しい技術を試せる。一方で、写しが原本と食い違った場合にどちらが正しいかは原本で決まる。

    • 英:record mirroring / 用例:Record mirroring lets banks verify fund holdings without changing the legal registry. (記録のミラーリングにより、銀行は法的な原簿を変えずにファンドの持分を確認できる)
  • Multi-Purpose Token:XRP Ledgerに組み込まれたトークンの規格。発行者による移転の制限やコンプライアンス用の情報の付加ができ、規制対象の資産を表すことを想定している。スマートコントラクトを別に書かずに使える点が特徴である。

    • 英:Multi-Purpose Token (MPT) / 用例:Each fund share is represented as a Multi-Purpose Token with issuer controls. (各ファンド持分は、発行者が制御できるMulti-Purpose Tokenとして表される)
  • パブリックチェーン:誰でも記録を閲覧でき、参加の許可が要らないブロックチェーン。透明性が高い一方、規制対象の資産を扱う場合は、トークンの側で保有者や移転を制限する仕組みが要る。

    • 英:public blockchain / 用例:Using a public blockchain allows approved institutions to check records independently. (パブリックチェーンを使うことで、承認された機関が独自に記録を確認できる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-05

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