日本経済新聞は9月9日、シティグループが2026年内にもトークン化預金を使った海外送金サービスを日本企業向けに始めると報じた。同社サービス部門グローバル責任者のシャミール・カリク氏の取材に基づく。利用企業は米国、英国、シンガポール、香港、アイルランドの同行拠点との間で、夜間や休日も外貨を即時に送金できるとされる。シティによれば外資系金融機関による日本企業向けの同種サービスとして初となる。シティ側の公式発表は確認できておらず、開始時期も確定していない。
何が起きたか
報道によれば、企業は送金の指示画面でトークンサービスを選ぶだけで利用でき、関連する事務やリスク管理はシティが担うため、企業側の事前準備はほぼ不要とされる。将来的には他の銀行との間でもトークン化預金をやり取りできるサービス展開を視野に入れているという。シティは2024年から資金管理サービス「Citi Token Services for Cash」を提供しており、参加者を限定した許可型ブロックチェーン上で、同行の対応拠点間の資金移動を24時間可能にしている。直近では9月7日に、シンガポールのDBS銀行がシティとトークン化預金を用いて週末の米ドル建て国際決済を完了したと発表した。取引は9月5日、DBSとシティのニューヨーク拠点間で実施されている。一方、今回の日本向けサービスについては、シティ自身による公式発表は確認できていない。対象通貨、手数料、想定する企業規模も報じられていない。
なぜ重要か
国内では、ゆうちょ銀行とSBI新生銀行がDCJPYを軸にトークン化預金を検討し、三菱UFJ系はProgmatを中心にセキュリティトークンの決済を実証してきた。いずれも実証または検討の段階にある。そこへ外資系が商用サービスとして入ると、企業財務の現場では「使える手段」が先に外部から供給されることになる。企業が海外拠点に前置きしている資金を減らせれば、その分は国内の預金残高や運転資金の置き方に影響する。取引銀行としての地位を、送金の即時性という一点で崩されうる構図であり、法人取引を持つ銀行にとっては競合分析の対象になる。
注視点
シティの公式発表が出ていないため、社内の検討段階と商用開始の区別は現時点では確認できない。自行ネットワーク内の資金移動である点も重要で、他行宛ての送金に対応するかは別の問題である。国内で提供する場合の資金決済法上・銀行法上の整理も示されていない。年内という時期が実際に守られるか、対象拠点が報道どおりの5カ国にとどまるかを追う必要がある。
用語解説
- トークン化預金:銀行預金をブロックチェーン上で移転できるデジタル形式にしたもの。発行銀行の負債である点でステーブルコインと異なり、預金保険や既存の銀行規制の枠内に収まる。
- Citi Token Services:シティが提供するトークン化預金の資金管理サービス。許可型ブロックチェーン上で同行の対応拠点間の資金移動を24時間可能にする。
- 許可型ブロックチェーン:参加者を限定して運営する分散台帳。誰でも参加できる公開型と異なり、参加者の本人確認と運営主体の統制が前提になる。
- 資金の前置き(プリファンディング):支払いに備えて海外拠点や取引先の口座にあらかじめ資金を置いておくこと。即時送金が可能になれば必要額を減らせる。
- 同時決済:資金と資金、または資金と証券の受け渡しを同時に完結させること。時差や休日の影響を受けにくくなり、決済リスクと資金拘束を減らす効果がある。
出典
- 日本経済新聞「米シティ、日本企業の海外送金即時に 『トークン化預金』外資初参入」(2026年9月9日): https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB067P50W6A800C2000000/
- あたらしい経済「シティ、日本企業向けにトークン化預金で海外送金へ。年内にも開始=報道」(2026年9月9日): https://www.neweconomy.jp/posts/606330
- NADA NEWS「米シティ、日本企業の海外送金を即時化へ──『トークン化預金』年内導入と報道」(2026年9月9日): https://www.nadanews.com/367408/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。