NEWSグローバル実装③本番稼働(限定領域)2026-09-07

サークルの機関投資家向けチェーン「Arc」9月16日稼働へ、SBIと住友商事が創業バリデータ

オープンなブロックチェーンだと説明しながら、免責条項では許可制のバリデータ群が運営すると書く。この二枚看板をどう読むかが問われている。

BY OFM Research · 4 MIN READ

SHARELB!

USDCの発行体である米サークルは2026年8月5日、自社が構築するブロックチェーン「Arc」のパブリックメインネットを9月16日に稼働させると公表し、創業バリデータ11社を発表した。ブラックロック、DTCC、ICE、ビザなどに加え、日本からSBIグループと住友商事が名を連ねる。一方で同社の免責条項は、Arcが許可制のバリデータ群によって運営され、いかなる規制当局の審査も承認も受けていないと明記している。オープンなネットワークという説明との距離が論点になる。

何が起きたか

Arcは現在プライベートメインネットの段階にあり、100を超える事業者と機関が構築に関与しているという。稼働時点でAave、Uniswap、Morphoといった分散型金融プロトコル、レイン、チューンズ、ワイレックスなどの決済事業者、バイナンス・ウォレット、ファイアブロックス、クラーケン、レジャー、メタマスク、アップビットといった取引所・ウォレット事業者が対応する予定とされる。取引手数料はUSDCで支払う設計で、ガス代の変動を抑える狙いがある。サークルはブラックロック、BNY、DTCC、スタンダードチャータードの4社がトークン化資産の決済、デジタル資産のカストディ、ステーブルコインへのアクセス、外国為替とレポの各領域で個別の接続を検討中だと説明している。

なぜ重要か

日本の金融機関にとっての論点は、SBIグループと住友商事という2社が海外発の決済基盤の合意形成に直接関与する点にある。バリデータは取引の順序と確定に関与する立場であり、単なる利用者や出資者とは責任の性質が異なる。自社がバリデータになる場合の法的地位、業務範囲の整理、障害時の責任分担は国内では前例が乏しい。加えて、許可制のバリデータ群が運営する以上、理論上は取引の巻き戻しが可能であり、公開型ブロックチェーンの「責任主体が存在しない」という難点と、許可型の「特定の主体に依存する」という難点のどちらを選ぶかという設計問題が正面に出てくる。

注視点

第一に、9月16日に予定どおり稼働するかである。サークル自身が免責条項で「すべての機能は予告なく変更、遅延、中止されうる」と述べている。第二に、バリデータの参加が創業11社の外に開かれるかどうかで、サークルは時期も可否も示していない。第三に、DTCCによる保管資産のトークン化は2027年下期の予定であり、稼働時点では実現しない。

進捗段階

実装トラック①(本番稼働の日程と参加者が確定した段階。実際の資産移転と反復取引はこれから)

用語解説

  • バリデータ:ブロックチェーン上で取引の正当性を検証し、台帳への記録を確定させる役割を担う主体。誰がバリデータになれるかで、そのネットワークが許可型か公開型かが決まる。金融機関がこの役割を担う場合、システム障害時の責任範囲を契約で明確にしておく必要がある。
  • 許可型バリデータ群(permissioned validator set):あらかじめ選定された事業者だけが検証に参加できる構成。運用品質と規制対応の水準を確保しやすい反面、参加者の合意があれば取引を取り消せる可能性が残る。
  • BUIDL:ブラックロックが運用するトークン化されたドル建て機関投資家向けファンド。米国債などで運用され、ブロックチェーン上で持分が移転できる。トークン化ファンドの中では残高規模が大きい部類に入る。
  • DTCC:米国の証券取引の決済・保管を担う中核インフラ。米国株式取引の圧倒的多数を清算しており、その保管資産がトークン化の対象になることは、市場インフラ側の対応が始まったことを意味する。
  • ガス代:ブロックチェーン上で取引を実行する際に支払う手数料。多くのチェーンでは価格変動の大きい固有通貨で支払うため費用が読みにくいが、Arcはステーブルコイン建てにすることでこの問題を回避する設計をとっている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-07

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。