NEWS米国実装⓪合意・表明のみ2026-09-18

WisdomTree、トークン化MMFをMoonPayの3,500万口座へ。同じ商品が販売対象と準備資産を兼ねる

トークン化した公社債投信が、個人の運用先であると同時にステーブルコイン発行者の準備資産にもなる。同じ商品が二つの役割を担う構図が、提携の形で表に出た。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

米WisdomTreeとMoonPayは2026年9月17日、トークン化されたマネー・マーケット・ファンド「WTGXX」の米国内でのアクセス拡大に向けた戦略的提携を発表した。WisdomTreeはMoonPayの技術と基盤を用い、自社の証券会社以外の販売経路を新設する。MoonPayは3,500万口座超を擁するとされ、自社のステーブルコイン準備資産の運用の一部にWTGXXを組み入れる計画も示した。MoonPayはWTGXXに関し証券会社や投資助言業者としては行動しないと明記されている。

何が起きたか

発表によれば、WisdomTreeが構築するのはMoonPayのブロックチェーン技術を用いたトークン化ファンドへのアクセス経路であり、既存の証券会社経由の販売網の外側に個人投資家を取り込むことを狙う。WTGXXは米国債等を投資対象とし、1株1ドルの維持を目指す商品で、FDICの預金保険や政府機関の保証は付かない。報道によればWTGXXの運用残高は約12億ドル(約1,873億円)で、集計サイトが把握するトークン化米国債市場の規模は9月17日時点で約154億ドル(約2兆4,041億円)とされる。WisdomTreeはこれまでもWTGXXについて24時間取引とリアルタイム決済を進めてきた。同社の全世界の運用資産残高は直近の報告期間で約1,767億ドル(約27兆5,846億円)である。

なぜ重要か

日本の資産運用会社と信託銀行にとって、注目すべきは商品の二重の用途である。MMFは従来、個人や法人の余資運用先として設計されてきたが、今回はステーブルコイン発行者の準備資産としての需要が同じ商品に重なる。準備資産としての保有は、発行残高の増減に応じた解約が発生しうる点で、通常の投資家層とは資金の性格が異なる。日本では電子決済手段の裏付け資産に要求される流動性と安全性が制度で定められており、トークン化MMFがその要件を満たしうるかは未整理のままである。裏付け資産としての適格性が論点になる前に、米国では実務が先に動いていることになる。

注視点

アクセス経路の稼働時期と、実際に適格とされる投資家の範囲。MoonPayが準備資産のうちどの程度をWTGXXに置くかは開示されておらず、この比率が明らかになって初めて資金の性格が読める。日本側では、トークン化MMFを電子決済手段の裏付け資産として扱いうるかという論点が、いずれ検討課題として浮上する。

進捗段階

実装トラック①(提携の発表段階。アクセス経路は構築中で、準備資産への組入れも計画の表明にとどまる)

用語解説

  • トークン化MMF(tokenized money market fund):マネー・マーケット・ファンドの受益権をブロックチェーン上で記録し移転できるようにしたもの。短期国債などを裏付けに元本の維持を目指す点は従来のMMFと同じで、変わるのは保有と移転の記録方法である。
    • 英:tokenized money market fund / 用例:The tokenized money market fund seeks to maintain a stable $1.00 share price.(当該トークン化MMFは1株1ドルの維持を目指す)
  • ステーブルコイン準備資産(stablecoin reserves):発行済みステーブルコインの価値を裏付けるために発行者が保有する資産。現金と短期国債が中心だが、運用効率を求めてトークン化された短期金融商品を用いる動きが出てきている。
    • 英:stablecoin reserves / 用例:The issuer plans to allocate part of its stablecoin reserves to the tokenized fund.(発行者は準備資産の一部を当該トークン化ファンドに配分する計画である)
  • 電子決済手段(electronic payment instrument):日本の資金決済法上の分類で、法定通貨に価値が連動し券面額での払戻しが約されるもの。裏付け資産には要求払預金や国債など、高い流動性と安全性を備えたものが求められる。
    • 英:electronic payment instrument / 用例:Japan's Payment Services Act treats yen-pegged stablecoins as electronic payment instruments.(日本の資金決済法は円連動のステーブルコインを電子決済手段として扱う)
  • リアルタイム決済(real-time settlement):取引の成立と資金・証券の受渡しの時間差をなくす決済。トークン化ファンドでは解約から資金受領までの日数短縮として現れ、準備資産としての使い勝手を左右する。
    • 英:real-time settlement / 用例:Real-time settlement shortens the gap between redemption and receipt of cash.(リアルタイム決済は解約から資金受領までの時間差を縮める)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-18

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。