英国の金融行為規制機構(FCA)は9月30日、暗号資産事業者からの認可申請の受付を始めた。英国で事業を続ける事業者は2027年2月28日までに申請する必要があり、新制度は同年10月25日に施行される。認可は自動ではなく、顧客保護や顧客資産の保全などの基準を満たせない事業者は営業できなくなる。英国に拠点を持つ日本の金融グループにとっては、暗号資産のカストディや取引仲介を行う場合の認可要否と申請期限の確認が必要になる。個別の審査期間の目安は示されていない。
何が起きたか
FCAは6月に暗号資産に関する最終規則とガイダンスを公表しており、今回はそれに基づく認可手続きの開始にあたる。報道によれば、新制度の対象は暗号資産の取引の仲介や執行、ステーキング、カストディなどで、上場(取扱い)時の開示、市場の不正行為、健全性、消費者保護の要件も新たに課される。現在の事業者はマネーロンダリング規則に基づく登録を受けているが、この登録は新制度の認可に自動では移行しない。FCAは、申請期間中に申請した既存の事業者は、施行までに結論が出なければ審査中も新規顧客の受け入れを含めて営業を続けられるとしている。FCAは申請期間中に出された申請を施行前に判断する見込みで、申請前の相談窓口とオンラインの説明会も用意している。
なぜ重要か
英国の新制度は、暗号資産を既存の金融規制の中に取り込む設計である。これまで英国の暗号資産事業者は、マネロン対策の登録だけで営業できた。今後は、証券会社や銀行と同じように、自己資本、顧客資産の保全、市場の不正行為の防止を求められる。日本の金融グループの英国拠点が、顧客の暗号資産を預かったり、トークン化された資産の取引を仲介したりする場合、その業務が新制度の対象に入るかを確認する必要がある。日本では、改正金融商品取引法により暗号資産取引を金商法の枠組みに移す作業が進んでいる。英国が申請から施行までをどう運用するかは、日本の移行期の運用を考えるうえでも比較の材料になる。英国は金融センターとしての競争力を意識しており、審査の厳しさと速さの両立がどこまでできるかも注目点になる。
注視点
締切までの申請件数と、施行時点で認可を得ている事業者の数が、市場の再編の規模を示すことになる。ステーブルコインの発行と、決済での利用に関するイングランド銀行の制度も並行して整備されており、事業者は両方への対応が必要になる。大手の海外取引所が英国で認可を申請するのか、それとも撤退するのかも、欧州連合のMiCAとの比較で見ておきたい。
進捗段階
制度トラック ③(最終規則は確定済み、認可申請の受付を開始。制度の施行は2027年10月25日)
用語解説
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FCA(金融行為規制機構):英国で金融機関の行為規制と、多くの金融事業者の認可を担う当局。銀行や保険会社の健全性はイングランド銀行傘下のPRAが監督し、FCAと役割を分けている。暗号資産事業者の認可と監督は、新制度でFCAが担う。
- 英:Financial Conduct Authority (FCA) / 用例:Crypto firms must now apply to the Financial Conduct Authority to keep operating in the UK. (暗号資産事業者は、英国で営業を続けるためにFCAへの申請が必要になった)
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認可(オーソリゼーション):規制対象の業務を行うために当局から受ける許可。登録と異なり、事業計画、経営陣、資本、内部管理の体制が審査される。基準に満たなければ許可されず、業務を続けられない。
- 英:authorisation / 用例:Authorisation is not automatic, and firms must show they meet the regulator's standards. (認可は自動ではなく、事業者は当局の基準を満たすことを示す必要がある)
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マネロン規則上の登録(MLR登録):英国で暗号資産事業者に求められてきた、マネーロンダリング対策のための登録。本人確認や疑わしい取引の届出の体制を確認するものの、顧客資産の保護や資本の要件は含まれない。新制度の認可には引き継がれない。
- 英:Money Laundering Regulations registration / 用例:Existing registration under the Money Laundering Regulations will not convert into authorisation. (マネロン規則に基づく既存の登録は、認可には移行しない)
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経過措置:新制度への移行期に、既存の事業者が一定の条件のもとで営業を続けられるようにする特例。移行時に市場が急に止まるのを防ぐ一方、審査が長引けば、未認可の事業者が営業を続ける期間が延びることにもなる。
- 英:transitional arrangements / 用例:Under transitional arrangements, applicants may continue serving customers while their files are reviewed. (経過措置のもとで、申請者は審査中も顧客へのサービスを続けられる)
出典
- FCA「FCA opens the gateway to regulated crypto」(2026年9月30日): https://www.fca.org.uk/news/press-releases/fca-opens-gateway-regulated-crypto
- The Block「FCA starts accepting crypto authorization applications ahead of 2027 regime」(2026年9月30日): https://www.theblock.co/news/regulation/2026-09-30-fca-starts-accepting-crypto-authorization-applications-ahead-of-2027-regime-417284
- 金融庁「資料2 金融庁説明資料」(AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム第1回、2026年9月30日): https://www.fsa.go.jp/singi/ai_onchain/shiryou/20260930/02.pdf
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。