NEWS欧州実装⓪合意・表明のみ2026-09-03

セキュリタイズとソシオス、プロ球団の少数持分をトークン化へ EU制度の5億ユーロ上限が壁になる

非上場のプロスポーツ球団の持分を、規制された市場インフラで扱おうとする構想である。ただし使う予定の制度には、発行体の規模に明確な上限がある。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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セキュリタイズ(NYSE: SECZ)とソシオス・ドットコムは2026年9月2日、プロスポーツ球団の少数持分を対象とするトークン化商品「ソシオス・エクイティ・トークン」を共同開発する提携を発表した。セキュリタイズがEUのDLTパイロット制度の下で認可を得た欧州取引・決済システムを用いる予定で、同システム初の案件になる見込みだという。ただし同制度は株式の受入れを発行体の時価総額5億ユーロ未満に限っており、対象球団や募集条件はいずれも未定である。

何が起きたか

両社は9月2日、マイアミとマドリードから共同で発表した。ソシオス・ドットコムがスポーツ業界との関係構築とファン向けの層を担い、セキュリタイズが証券発行、投資家のオンボーディング、権利者記録の管理、譲渡制限、継続的な事務を規制対象子会社を通じて担う構成である。想定する対象は二層で、球団と深い経済的関係を持ちたい適格なファンと、代替資産として球団持分に投資機会を求める機関投資家を並べる。世界のプロスポーツ球団の総価値は約5,000億ドル(1ドル=160円で約80兆円、筆者換算)とする。

使用が見込まれるのは、セキュリタイズが2025年11月にスペイン証券市場委員会の認可を得た欧州取引・決済システムである。EU27カ国で分散台帳型の取引・決済インフラを運営でき、報道によればアバランチ上に構築されている。参加球団、募集条件、投資家適格性、対応チェーンは個別商品の承認時に公表するとされる。両社は、当該トークンが開発中で購入・投資の対象として提供されていないことを明記している。

なぜ重要か

日本の証券会社・信託銀行への示唆は、非上場の事業持分をトークン化する際にどの制度の枠へ載せるかという選択である。国内のSTは不動産と社債を中心に組成されてきたが、事業会社の持分そのものをトークン化する実務は限られている。EUが時限的な特例枠を用意し、その最初の案件が非上場の球団持分に向かったという事実は、制度が想定していた用途と実際の需要のずれを示している。

もう一点は、ファン向けと機関投資家向けを同じ商品で狙う設計である。少額のファンを大量に抱えることは、投資家適合性の確認、継続開示、権利行使の実務コストを押し上げる。ただし現時点では、提携の発表であって商品の組成でも発行でもない。

注視点

最大の論点は規模の上限である。EU規則2022/858の第3条は、DLT市場インフラに受け入れられる株式を、受入時点で発行体の時価総額が5億ユーロ未満のものに限る。社債は10億ユーロが上限である。強豪クラブの多くはこの水準を超えるとみられ、対象球団の層は限定される可能性がある。対象球団と募集条件の公表が最初のマイルストーンとなる。

進捗段階

実装トラック⓪(合意のみ)。提携の発表であり、商品の組成、当局の個別承認、発行のいずれも行われていない。

用語解説

  • EU DLTパイロット制度:分散台帳を用いた証券の取引・決済インフラについて、既存のEU法の一部適用を免除する時限的な特例枠組み(規則2022/858)。既存の証券決済法制が紙や中央集権的な記録を前提としているため、それを緩めた環境で実証を行い、制度改正の材料を得ることを目的とする。受け入れられる証券の規模に上限が課されている点が特徴である。
  • ファントークン:スポーツクラブが発行し、投票への参加や特典へのアクセスを提供するトークン。多くの場合、クラブの持分や収益に対する法的な請求権を伴わないため、証券とは区別されて扱われてきた。今回の構想は、この非証券のファントークンとは別に、証券としての持分トークンを新たに設ける位置づけである。
  • 少数持分:会社の支配権を伴わない出資持分。非上場企業では取引の相手を見つけにくく、価格形成の手がかりも乏しいため、売却したい既存株主と買いたい投資家の双方にとって流動性の欠如が制約となる。トークン化が解こうとしているのは主にこの点である。
  • 取引・決済システム(DLT TSS):DLTパイロット制度が認める類型のひとつで、取引の執行と決済を単一の主体・単一の基盤で一体的に行う仕組み。伝統的な市場では取引所と証券決済機関が分離されているが、この分離を前提とした規制を一部免除することで、台帳上で執行と決済を同時に完結させる構成を可能にする。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-03

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