NEWS米国制度①案の公表・意見募集2026-09-03

SEC、株主名簿管理人規則を約40年ぶりに改正へ 分散台帳を新カテゴリではなく既存規制に取り込む

トークン化証券の権利者名簿は誰がどの台帳で管理するのか。米SECはこの問いに、新しい業態区分を設けるのではなく、既存の登録業者規制を書き換えるという答えを出そうとしている。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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米証券取引委員会(SEC)は2026年9月1日、登録株主名簿管理人に適用する規則と様式の改正案を公表した。1977年と1983年に採択された規則の実質的な改正は約40年ぶりで、分散台帳の利用を前提に用語を技術中立化し、リスク管理と譲渡制限文言に関する規定を新設する。オンチェーン名簿管理人を別区分として切り出さず既存の業規制に取り込む設計は、日本のST基盤で台帳を保持する主体の責任論に直結する。意見募集は連邦官報掲載後60日間で、掲載日は未確定である。

何が起きたか

SECは9月1日、登録株主名簿管理人に適用する規則・様式の包括的な改正案を公表した(プレスリリース2026-81)。規則17ad-1から17ad-7は1977年6月16日、17ad-9から17ad-13は1983年6月10日の採択で、以後実質的な改正はない。なおSECのファクトシートは提案日を8月28日と記載しており、公表日と別の日付が併存している。

主な内容は、登録の効力発生を様式TA-1提出後30日から45日へ延長すること、提出済みの様式TA-2に重要な誤りが判明した場合に60日以内の訂正提出を義務づけること、記録保存期間の一本化である。資金・証券の保全を定める規則17ad-12は包括的なリスク管理規則へ再構成され、顧客資金の分別口座と業務継続計画が求められる。適用除外を定めた規則17ad-4は廃止する。新規則は2本で、17ad-30がコンプライアンス方針の整備、17ad-31が譲渡制限文言の付与・解除の要件を定める。意見募集は官報掲載後60日間である。

なぜ重要か

日本のST実務では、Progmatやibet for Finの上で信託銀行と基盤運営者が実質的に権利者記録の保持機能を担っている。未整理なのは、ブロックチェーン上の記録が権利の所在をどこまで決めるのか、その記録を保持する主体にどのような業務規制がかかるのかという点である。

SECの案は、オンチェーン名簿管理人という新区分を作らず、既存規制の用語と義務を書き換えて取り込む方向を示した。業として台帳を保持する主体に、分別管理・業務継続計画・コンプライアンス方針を明示的に課す構成である。既存の業規制に載せるという解法が主要市場で条文の形をとった意味は小さくない。規則17ad-31も、譲渡承認手続きの実装として国内ST実務と課題を共有する。

注視点

意見募集の起算日となる官報掲載日が未確定で、最終規則の時期も示されていない。報道によれば様式TA-2に、分散台帳で株主名簿を保持している銘柄数と、発行体主導型・第三者主導型の区分を報告させる欄が加わるとされるが、公表されたファクトシートに記載はなく、提案書本文での確認を要する。

進捗段階

規制トラック①(協議・案の段階)。改正案の公表であり、規則の採択・施行ではない。

用語解説

  • 株主名簿管理人(トランスファー・エージェント):発行体に代わって証券の保有者記録を維持し、名義書換、証券の発行・消却、配当支払いなどを処理する登録業者。誰がどれだけ保有しているかという公式記録の保持者であり、決済システムが動くための前提となる。日本の株主名簿管理人(信託銀行等)に近い機能を担う。
  • 様式TA-1・TA-2:それぞれ株主名簿管理人の登録申請書と年次報告書。TA-2には取扱銘柄数や処理件数など業務実態が記載される。監督当局が業界全体の実態を把握する主要な情報源であり、報告項目の追加は監督対象範囲の実質的な拡大を意味する。
  • 譲渡制限文言(restrictive legend):未登録で発行された証券に付され、一定期間または一定条件を満たすまで転売できないことを示す記載。従来は証券の券面や記録に文字として付されてきたが、トークン化されるとスマートコントラクトの転送制限として実装されうるため、その付与・解除の責任所在が論点になる。
  • 規則17ad-12:株主名簿管理人が保有する資金・証券の保全を定める既存規則。改正案では、単なる保全義務から、事業に伴う重要リスクを特定・測定・監視・低減する体制の整備まで求める包括的なリスク管理規則へ位置づけを変える。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-03

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