NEWS日本制度⓪検討・研究2026-08-28

成長投資金融戦略、オンチェーン決済を「金融インフラへの投資」の章に配置——具体化の結論期限は2026年度末

オンチェーン金融は、単独のデジタル政策としてではなく、成長投資を支える金融インフラの一項目として設計された。所管と予算の置き場所が変わる。

BY OFM Research · 4 MIN READ

SHARELB!

内閣官房は2026年7月21日、「成長投資を促進するための金融戦略」を策定・公表した。同日閣議決定の「日本成長戦略」に基づく施策パッケージで、全5章のうちオンチェーン金融は第4章「金融システムを支えるインフラへの投資」に置かれ、サイバーセキュリティ対策と並ぶ。金融機関にとっては、トークン化預金やステーブルコインが決済の効率化策ではなく成長資金の供給基盤として整理された点が論点となる。個々の施策は特段の記載がある場合を除き2026年度末までを目途に結論を得るとされ、内容はなお確定していない。

何が起きたか

同戦略は「資産運用立国」の取組を発展させる位置づけで、2040年度に国内投資250兆円、2040年までに家計金融資産に占める株式・投資信託・債務証券の割合40%(2025年3月末は約23%)を目標に掲げる。

第1章には、銀行等の投資専門子会社による株式非公開化・カーブアウト案件への議決権100%出資、大型M&A資金等を大口信用供与等規制の特例承認の対象とする明確化、売買目的のローン債権をトレーディング勘定で扱う見直しが並ぶ。

オンチェーン金融は第4章に「AI時代を見据えたオンチェーン金融イニシアティブ」として置かれた。金融庁が関係省庁とともにフォーラムを2026年夏に立ち上げ2027年初に中間整理をまとめること、日本銀行が日銀当座預金のオンチェーン対応の論点整理を年内に取りまとめること、財務省が国債等のトークン化を検討することが記された。既存インフラとの「ベストミックス」を鍵と位置づけており、置換ではなく併存が前提である。

なぜ重要か

要点は、オンチェーン決済がデジタル化施策ではなく資金供給インフラとして整理されたことにある。トークン化預金やステーブルコインを新規事業部門やシステム部門の案件として扱ってきた金融機関は、法人取引・決済部門を含む体制に置き直す必要が生じる。

同戦略は金融庁の「必要な組織拡充」の検討にも触れていた。金融庁は8月5日に組織再編を公表し、政令施行日の8月7日に実施、資金決済課と暗号資産・ステーブルコイン課を新設した。再編理由として同戦略は挙げられていないが、当局側の窓口が明確になった点は実務上の変化である。

注視点

第一に、オンチェーン金融フォーラムの設置。2026年夏の立ち上げとされているが、金融庁の報道発表では8月27日時点で告知が確認できない。

第二に、日銀の年内取りまとめ。銀行間決済をどの階層で最終化するかは、自行トークン化預金の設計着手の時期を左右する。

第三に、2027年度予算の概算要求。『「強く豊かな日本」投資枠』の対象に「金融(オンチェーン決済システムに関するものを含む)」が明記されており、配分額は編成過程で判明するとみられる。

進捗段階

規制トラック②:成立・確定(未施行)。政府方針としては確定しているが、個々の施策は結論期限を2026年度末に置いた検討段階にあり、法令・制度としては未着手のものが多い。

用語解説

  • 成長投資金融戦略:正式名称は「成長投資を促進するための金融戦略-資産運用立国のアップグレード-」。同日閣議決定の「日本成長戦略」が、金融分野の包括的な施策パッケージとして策定を求めたもの。閣議決定文書そのものではなく、内閣官房が策定・公表した実施計画にあたる。
  • トークン化預金:銀行預金をブロックチェーン上のトークンとして表現し、移転できるようにしたもの。発行体は銀行であり、預金保険や銀行法の枠組みの中にとどまる点でステーブルコインと異なる。商流データと連動した条件付き支払いを組み込める点が、既存の振込との違いになる。
  • 大口信用供与等規制:特定の融資先にリスクが集中することを避けるため、同一グループ向けの与信を自己資本の25%以下に制限する規制。今回、一定要件の下で限度額超過の特例承認の対象を明確化する方針が示された。
  • 『「強く豊かな日本」投資枠』:政府が創設を予定する予算枠組み。成長投資金融戦略は、その対象に「金融(オンチェーン決済システムに関するものを含む)」などの分野横断的な課題への取組が含まれると記している。オンチェーン決済インフラが予算措置の対象になり得ることが政府文書上で確認できる一方、規模は同戦略には示されていない。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-28

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