米通貨監督庁(OCC)は2026年9月2日、OpenReserve Bank, National Association(設立中)の国法銀行免許申請に対し予備的条件付き承認を与えた。全預金商品にトークン化機能を持たせ、完全子会社を通じて米ドル建て準備資産裏付け型ステーブルコインの発行・保管・交換・支払いを行う計画である。開業には払込資本金2億1000万ドル(本稿の換算で約336億円、1ドル=160円)とTier1レバレッジ比率12%以上の維持などの条件があり、営業開始はまだ認められていない。
何が起きたか
申請は2026年4月13日に提出された。OCCの決定書によれば、設立予定銀行はユタ州ソルトレイクシティに本店を置き支店を設けず、預金・貸出商品、決済・トレジャリーサービス、デジタル資産サービスなどを提供するフルサービスの預金保険付き国法銀行として運営される計画で、全預金商品にトークン化機能を備えるとされている。完全子会社を設立して米ドル建て準備資産裏付け型ステーブルコインの発行、保管、交換、支払いを行う予定だが、子会社の設立申請はまだ提出されていない。
条件は四つである。必要な範囲でステーブルコイン発行を含む業務をGENIUS法および今後施行される法令に適合させること、営業開始から3年間はTier1レバレッジ比率を12.0%以上に維持すること、上級役員および取締役の選任前にOCCの無異議書を得ることである。払込資本金は費用控除後で2億1000万ドル以上とされ、予備承認日から12か月以内に資本を調達できない場合、または18か月以内に開業しない場合、承認は失効する。
なぜ重要か
これまで暗号資産事業者が取得してきた国法信託銀行免許は、保管業務を認める一方で預金受入れと貸出を認めない限定的なものだった。今回の対象はフルサービスの預金保険付き国法銀行であり、預金という負債でオンチェーンの資金移動を担う構造になる。
日本の銀行への示唆は二つある。第一に、トークン化預金を特定商品として切り出すのではなく、全預金商品にトークン化機能を付すという設計思想である。国内の実証は特定用途が中心であり、預金全体の機能とする発想は勘定系の改修計画に影響しうる。第二に、3年間のTier1レバレッジ比率12%という水準は通常の新設銀行に求められる水準を上回る。オンチェーン業務に自己資本上の上乗せを求める発想は、日本の監督実務でも論点になりうる。
注視点
第一に、2億1000万ドルの資本調達が12か月以内に完了するかどうか。第二に、ステーブルコイン子会社の設立申請の時期とGENIUS法の最終規則との整合。第三に、FDICの預金保険とFRBの株式取得という別途の手続きの進捗である。
進捗段階
実装トラック①(予備的条件付き承認のみ。開業も業務開始も未了)/規制トラック②(GENIUS法適合が承認条件として明示された)
用語解説
- 予備的条件付き承認:国法銀行免許の手続きにおける中間段階の決定。開業前の各種要件を満たし最終承認を得るまで、営業は開始できない。
- 国法信託銀行免許:OCCが付与する限定的な銀行免許。保管や受託業務を認める一方、預金受入れや貸出は認められないのが一般的である。
- Tier1レバレッジ比率:中核的自己資本を総資産で除した比率。リスクウェイトを用いないため、資産構成にかかわらず一定の資本水準を求める指標となる。
- GENIUS法:米国の決済用ステーブルコインに関する連邦法。発行体の資格、準備資産、償還などの要件を定める。
- 非信託的保管:受託者としての善管注意義務を負う形ではなく、単なる保管者として資産を預かる形態。法的な責任の範囲が信託型と異なる。
出典
- OCC「Corporate Decision #1389」(2026年9月2日): https://www.occ.gov/topics/charters-and-licensing/interpretations-and-decisions/2026/cd1389.pdf
- The Block「Andreessen Horowitz-backed OpenReserve secures preliminary OCC approval for national bank charter」(2026年9月4日): https://www.theblock.co/news/regulation/2026-09-04-andreessen-horowitz-backed-openreserve-secures-preliminary-occ-approval-for-national-bank-charter-413528
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。