NEWS欧州実装②限定実装(パイロット)2026-09-16

ECB、デジタルユーロ・パイロットのEC加盟店を公募 2027年下期から12か月、19か国で実取引を検証

リテールCBDCの検証は、技術ではなく「受け入れてくれる店が集まるか」を確かめる段階に入った。報酬も手数料もない条件で加盟店を募る設計が試金石になる。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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ECBは2026年9月15日、デジタルユーロ・パイロットに参加するEC・モバイルコマース加盟店の公募を開始した。対象はEU域内に設立され、19のパイロット実施国のうち2か国以上で販売する事業者で、応募締切は10月27日である。パイロットは2027年下期から12か月間、ユーロシステム職員が試験版の「ベータ・デジタルユーロ」で実際に購入する形で行う。日本の決済事業者にとっては、加盟店の受入れ負担や精算の扱いを当局が設計段階から検証する手順が参考になる。発行判断はEUの立法を待つ。

何が起きたか

公募文書によると、パイロットは個人間(P2P)と個人から事業者(P2B)の支払いを、対面と遠隔の両方で計4つのユースケースとして検証する。今回の公募は、このうち遠隔P2B、つまりECサイトやアプリでの支払いを担う加盟店が対象である。

選ばれた加盟店はECBと契約を結び、7月に選定された決済サービス事業者(PSP)のうち加盟店業務を担う「アクワイアリングPSP」とも契約を締結または修正する。報酬は職員の購入代金以外に支払われず、PSPへの手数料も求められない。受け取った代金は、デジタルユーロではない通常の決済口座に即時入金または後日支払いで精算される。

日程は、2026年10–12月期から2027年1–3月期に選定し、4–6月期から7–9月期に接続・統合作業を行う。運用期間は2027年7–9月期から2028年7–9月期までである。応募は10月27日17時(中欧時間)が締切で、説明会は10月6日に予定されている。

ベータ・デジタルユーロはユーロシステムの負債として発行されるが、提案中のデジタルユーロ規則上のデジタルユーロではなく、法定通貨の地位も持たない。

なぜ重要か

リテールCBDCは、利用者に配っても使える店がなければ普及しない。ECBがPSPの選定に続いて加盟店を公募し、実装負荷、チェックアウトへの組み込み、照合・精算の運用負担まで報告を求めるのは、この「受入れ網」の実現可能性を実データで測るためとみられる。日本銀行もCBDCの実験を進めてきたが、加盟店側の業務負担を公募で集めた事業者と実取引で検証する段階の公表はない。国内のアクワイアラーや決済代行にとっては、新しい決済手段を既存の加盟店契約にどう追加するか、精算を既存口座に戻す設計で資金繰りがどう変わるかという論点を先取りできる材料になる。

注視点

応募数と選定社数、対象から外す業種の範囲が次の公表事項である。報道によれば、EUのデジタルユーロ規則は欧州議会が7月に三者協議(トリローグ)入りを決めた段階にあり、ECBは発行の最終判断を立法の成立後に行うとしている。報道では2029年の発行が想定されているが、ECBは発行を決定していない。

進捗段階

実装トラック:⓪→①(パイロット参加者の募集段階。運用開始は2027年下期予定)

用語解説

  • デジタルユーロ:ECBが検討する個人向けの中央銀行デジタル通貨(CBDC)。現金に近い公的なデジタル決済手段として、ユーロ圏の決済の自律性を高めることを狙う。
  • ベータ・デジタルユーロ:パイロット専用の試験的な決済手段。デジタルユーロに近い機能を再現するが、法定通貨ではなく、パイロット参加者の間でのみ使われる。
  • アクワイアリングPSP:加盟店と契約し、支払いの受入れや売上代金の入金を担う決済サービス事業者。カード決済でいう加盟店契約会社(アクワイアラー)に相当する。
  • P2B決済:個人から事業者への支払い。店頭での対面決済と、ECやアプリでの遠隔決済に分かれ、今回の公募は後者を対象とする。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-16

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