コインベースは2026年9月3日、米国で単一株式を原資産とする無期限先物を提供するため、傘下2社が9月1日付でSECへ通知登録書類を提出したと公表した。CFTC登録の指定契約市場コインベース・デリバティブズがForm 1-Nを、先物取引業者コインベース・フィナンシャル・マーケッツがForm BD-Nを提出している。単一株先物はSEC・CFTCの共同規制対象で、次の関門はCFTCによる商品審査となる。開始時期・対象銘柄・レバレッジ上限はいずれも未公表で、上場が決まったわけではない。
何が起きたか
同社の最高政策責任者ファリアル・シルザド氏がSNSで明らかにした。添付書類によれば、CFTCに指定契約市場(DCM)として登録済みのコインベース・デリバティブズが、証券先物商品を扱う取引所としてSECに通知登録するためのForm 1-Nを9月1日付で提出した。あわせて、CFTC登録の先物取引業者(FCM)であるコインベース・フィナンシャル・マーケッツが、証券先物商品の取引に限定したブローカーディーラーとしてSECに通知登録するためのForm BD-Nを同日付で提出している。
単一株式を原資産とする先物は米国では証券先物商品に分類され、SECとCFTCの共同規制対象となる。次段階はCFTCによる商品の審査になると同社は説明する。コインベースは2026年3月20日から米国外の適格利用者向けに、アップルやエヌビディアなどの個別株やSPY、QQQといったETFを対象とする株式パーペチュアルをUSDC決済で提供してきた。
なぜ重要か
注目すべきは、新しい規制カテゴリーの創設を求めていない点である。既存の証券先物枠組みに乗せる形を選んだことで、審査の焦点は制度を作るかではなく既存制度の要件を満たすかに移る。同種の主張は先般オンド・ファイナンスが意見書で示していたが、コインベースは登録行為で先に動いた。
日本の証券会社にとっての含意は二つある。第一に、24時間取引の需要が現物株ではなくデリバティブ側から先に制度化されうる点である。現物株の24時間化には決済インフラの改修が要るが、差金決済型なら現行の清算枠組みの延長で対応しうる。第二に、米国で単一株パーペチュアルが規制商品として成立すれば国内投資家の要望が高まる。日本では個別株を原資産とする無期限型商品の制度的な受け皿が乏しく、金融商品取引法上の位置づけとリスク管理体制の整理が先行課題となる。
注視点
第一に、CFTCの商品審査がいつどのような条件で結論を出すか。第二に、レバレッジ上限と資金調達率の設計、対象銘柄の範囲である。ここが投資家保護上の実質的な論点になる。第三に、CMEがCFTCを相手取った関連訴訟の帰趨も競合構図に影響しうる。
進捗段階
実装トラック①(届出提出済み。米国内での提供開始は未確定)/規制トラック①(SECへの通知登録は提出段階、CFTCの商品審査は未了)
用語解説
- パーペチュアル(無期限先物):満期日を設けない先物型のデリバティブ。資金調達率の授受によって価格を原資産に収束させる設計が一般的である。
- 証券先物商品:単一株式や狭い株価指数を原資産とする先物。米国ではSECとCFTCが共同で規制し、双方への登録が必要になる。
- 指定契約市場(DCM):CFTCの規制下で先物取引を行う取引所の登録区分。上場商品はCFTCの審査または自己認証の手続きを経る。
- 通知登録:一方の当局に既に登録している業者が、他方の当局に簡易な届出で登録する制度。Form 1-NとForm BD-Nがこれに用いられる。
- 先物取引業者(FCM):顧客の先物注文を受託し証拠金を預かる業者。日本の商品先物取引業者に近い機能を担う。
出典
- あたらしい経済「コインベース、米国で単一株パーペチュアル提供目指す、SECに通知登録」(2026年9月4日): https://www.neweconomy.jp/posts/605306
- The Block「Coinbase seeks SEC greenlight to list equity perpetuals」(2026年9月3日): https://www.theblock.co/news/regulation/2026-09-03-coinbase-seeks-sec-greenlight-to-list-24-7-equity-perpetuals-413487
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。