SECは、暗号資産を用いた資金調達に連邦証券法の登録免除を設ける規則案「Regulation Crypto Assets」を公表した。金額上限つきの免除枠に加え、投資契約が消滅したとみなす条件を明文化した点が、日本の実務にとっての本丸である。
何が起きたか
規則案(Release No. 33-11434)は4本柱で構成される。「スタートアップ免除」は、4年間で最大500万ドル(約7億9,500万円。1ドル=159円で換算、以下同じ)まで1回限り1933年証券法の登録を免除するもので、期間の始期と終期における公開届出と、期間中の原則ベースの記述的開示が条件となる。「資金調達免除」はレギュレーションAを一部モデルとした2階建てで、Tier1が12カ月あたり2,000万ドル(約31億8,000万円)、Tier2が同7,500万ドル(約119億円)。Tier2では監査済み財務諸表と継続的な報告が求められる。
3本目の「投資契約セーフハーバー」は、①投資契約の下で表明・約束した本質的な経営努力(essential managerial efforts)を完了または恒久的に停止し、新たな表明・約束を行う意図もないこと、②条件充足を証明する公開届出とその根拠となる分析を提出すること——の2要件を満たせば、当該投資契約は消滅したとみなし、対象の暗号資産を証券の定義上の投資契約に該当しないものとして扱う。4本目は「適格購入者」の定義新設により、州証券法の登録・適格性要件をプリエンプト(連邦法が州法の適用を排除)する。いずれの免除でも、詐欺・相場操縦に関する規定は引き続き適用される。
なぜ重要か
日本は2026年7月15日成立の改正法により、暗号資産規制を資金決済法から金融商品取引法へ移管し、有価証券とは別の金融商品として位置づける道を選んだ。今回の米国の設計はこれと対照的で、トークンそのものではなく「投資契約」という取引の性質を規律対象とし、しかもその契約は終わりうるものとして扱う。同じトークンであっても、発行体の経営努力の状況次第で法的な位置づけが時点によって変わる建て付けである。
実務への影響は取扱審査に出る。国内の暗号資産取引業者や証券会社が海外発行トークンを扱う際、米国側での法的地位を判定する材料が、発行体による自己証明とその根拠分析という開示物になる。その分析をどう検証し、どこまで依拠するかは、各社の審査体制の設計問題として残る。
注視点
規則案の段階であり、意見受付は連邦官報掲載後60日間。アトキンス委員長は声明で、議会による市場構造法案(CLARITY法案)の成立を支持したうえで、現行の法的権限の下で行動していると述べている。立法が先行した場合に規則案がどう組み替えられるかが焦点となる。なお本規則案は資金調達時の投資契約を対象としており、既存の有価証券をトークン化して取引する場面を扱うものではない。
出典
- SEC「SEC Proposes New Regulation Crypto Assets」(2026年8月18日): https://www.sec.gov/newsroom/press-releases/2026-76-sec-proposes-new-regulation-crypto-assets
- SEC「Fact Sheet: Regulation Crypto Assets」: https://www.sec.gov/files/33-11434-fact-sheet.pdf
- SEC「Regulation Crypto Assets」規則案本文(Release No. 33-11434): https://www.sec.gov/files/rules/proposed/2026/33-11434.pdf
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月): https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/02/03.pdf
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。