ネットスターズが商用化した店舗向けステーブルコイン決済サービスを、ローソンの既存POSレジに接続する実証が行われた。専用端末を置かずに既存のバーコード決済の枠組みへ載せた点が、これまでの実証と決定的に異なる。
何が起きたか
ネットスターズは8月3日、同社のキャッシュレス決済ゲートウェイ「StarPay」を基盤とするステーブルコイン決済サービス「Stablecoin Pay」について、ローソン大崎アトリウム店で8月17日に店頭決済の実証実験を行うと発表した。同日に予備実験も実施している。対象はネットスターズ・ローソン等の関係者に限られ、一般利用者は参加していない。
対応したのは、MetaMask上のUSDC(Solana、Morph、Polygonの3チェーン)、USDT(同3チェーン)、円建てのJPYC(Polygonチェーン)である。検証項目は決済速度、店舗オペレーションへの影響、顧客体験とされた。
サービス自体は7月13日に商用提供が始まっている。加盟店の決済手数料は0.98%(非課税)、決済方式はCPM(顧客がQRコードを提示する方式)で、外貨建てステーブルコインでも金額表示・売上管理・精算は日本円ベースで行える設計である。ローソン側は今回、新たな決済ボタンを追加せず、従来の「バーコード決済」ボタンから利用者のバーコードを読み取り、POSが決済手段を判別してネットスターズ側へ処理を回す構成をとった。取材報道によれば、バーコード読み取りから完了までは5秒程度で、ブロックチェーン上のガス代はネットスターズが一時的に立て替え、利用者が支払うハンドリング手数料に組み込まれる。
なぜ重要か
論点が「専用端末やQRコードの掲出を店舗に負担させられるか」から「既存POSの決済手段判別のロジックに載せられるか」へ移った。ここが移ると、普及の律速はチェーンでもウォレットでもなく、既存の決済ゲートウェイ事業者がどの順序で対応するかになる。加盟店開拓を持つ事業者が有利になる構図であり、銀行・カード会社にとっては自社の加盟店基盤の使い道を問い直す材料になる。
手数料0.98%という水準も、額面どおりには読めない。これは加盟店が負担する率であって、ガス代と為替に伴うコストは利用者側のハンドリング手数料に回っている。誰がどのコストを持つかの設計が変われば、加盟店側の水準も動きうる。また、ドル建てステーブルコインをインバウンド決済の受け皿に据える発想は、外貨両替や国際ブランド決済の収益と正面から競合する。国内加盟店を抱える事業者には、収益構造の置き換えとして評価すべき論点である。
注視点
ローソンは本格導入の時期を決めていない。利用者側には、MetaMask内のブラウザから決済ページを開く手間や、同じ銘柄でもチェーンごとに処理が分かれる複雑さが残る。この複雑さを利用者に意識させない形にまとめられるかが、実装の分かれ目になるとみられる。制度面では、外貨建てステーブルコインを国内で流通させる裏付けがどこまで整うかが、このモデルの前提を左右する。
出典
- 株式会社ネットスターズ(ニュースリリース「ローソン店舗における『Stablecoin Pay』の店頭決済実証実験を8月17日に実施」)(2026年8月3日): https://www.netstars.co.jp/news/9509/
- 株式会社ネットスターズ(ニュースリリース「日本初、ステーブルコイン決済に対応する『Stablecoin Pay』本格始動」)(2026年7月13日): https://www.netstars.co.jp/news/9450/
- NADA NEWS(実証当日の取材記事)(2026年8月17日): https://www.nadanews.com/364314/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。