NEWSグローバル実装本番稼働(限定領域)2026-08-26

コインベース、トークン化米国株をBase上で提供開始 独自規格「B20」で配当・分割をオンチェーン処理

トークン化株式の勝負どころが、銘柄数から規格へ移った。配当と株式分割をオンチェーンでどう処理するかという地味な設計が、実務上の分岐点になっている。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

Baseは2026年8月24日、Coinbaseが発行するトークン化米国株が「B20」規格でBase上に稼働したと発表した。実株を1対1で規制対象のブローカー兼カストディアンAlpacaが保管し、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)の規制当局の監督下で倒産隔離構造を採る。提供先は適格法域の米国外ユーザーに限られ、米国居住者と日本の投資家はいずれも対象外である。国内制度の設計はこれからだが、コーポレートアクション処理とオラクル価格の供給が事実上のインフラ層として固まりつつある局面といえる。

何が起きたか

Baseの公表によれば、発行構造はこうである。オーソライズド・パーティシパントと呼ばれる機関マーケットメイカーが実株を購入し、その株式を規制対象のブローカー兼カストディアンAlpacaが倒産隔離構造で保管する。ADGMの規制当局の監督下に置かれ、トークン保有者は当該株式への直接の請求権を持つ。合成的な価格連動商品ではないと明示されている。

規格面では、B20がERC-20の拡張であるため、既存のウォレットやプロトコルが追加実装なしに扱える。ミント後はホワイトリスト登録が不要である。配当と株式分割はオンチェーンの乗数で処理され、保有残高そのものは変動しない。DeFiに投じた既存ポジションが壊れない点が設計上の要点とされる。取引は24時間行え、Aave上での担保利用も想定される。

報道によれば初期銘柄はエヌビディア、メタ、アップル、アルファベットの4銘柄で、約50の第三者プロトコルが初日から対応を表明した。価格はChainlinkが供給する。

なぜ重要か

日本の証券会社にとっての含意は、規格の標準化が先に進んでいる点にある。国内では株式のトークン化について、Progmat中心のワーキンググループが2026年4月7日に中間整理を公表した段階で、制度設計はこれからだ。その間に海外では、コーポレートアクションの処理方式とオラクル価格の供給が固まりつつある。

これは、自前でトークンを発行するより既存規格に載る設計を評価すべき局面が来ることを意味する。信託銀行やカストディ事業者にとっては、倒産隔離とADGM準拠という構造が国内の信託スキームと比較される。一方、ミント後にホワイトリストを課さない設計は、適合性原則や勧誘規制を前提とする日本の投資家保護の枠組みとは相性が悪い。

注視点

第一に、銘柄拡大のペースと、xStocks・bStocks・Ondoなど他方式との規格競争の帰趨。第二に、米SECのトークン化「イノベーション例外」の行方である。9月15日の上院におけるCLARITY法案の手続き投票を待って再開されるとみられ、米国内での提供可否が分かれる。第三に、議決権など株主権の扱いは公表資料から確認できていない。

用語解説

  • B20/ERC-20:ERC-20はイーサリアム系チェーンで最も普及しているトークンの共通仕様で、ウォレットや取引所が個別対応なしに扱えることが最大の利点である。B20はこれを拡張し、ステーブルコインや実物資産の表現に必要な機能を加えた規格。既存仕様の上位互換であるため、対応済みのアプリケーションがそのまま使える点が採用の決め手になる。
  • 倒産隔離(bankruptcy-remote):裏付資産を保管する事業者が破綻しても、その資産が破産財団に取り込まれず投資家に帰属するようにする法的構造。日本の信託を用いた分別管理と目的は同じで、トークン保有者が「価格連動の請求権」ではなく「現物への権利」を持てるかどうかを左右する。
  • ADGM(アブダビ・グローバル・マーケット):アラブ首長国連邦アブダビにある金融フリーゾーンで、英国法をベースにした独自の法体系と金融規制当局を持つ。デジタル資産の発行・カストディに関する枠組みを早期に整備しており、米国やEU向けに提供できない商品の組成地として使われる例が増えている。
  • オーソライズド・パーティシパント(AP):ETFの設定・交換を担う指定参加者と同じ役割で、原資産を市場で調達してトークンの発行を受け、逆に償還も行う。APが機能することで、トークンの市場価格が原株価から大きく乖離しない仕組みが働く。裏を返せば、APの参加が細ればトークンの価格規律も緩む。
  • オラクル価格フィード:ブロックチェーン外部の価格情報をスマートコントラクトが参照できる形で供給する仕組み。トークン化株式を担保に融資を行う場合、清算判定は常にこの価格に依存するため、フィードの停止や誤配信は直接に信用損失につながる。オンチェーン金融における信用リスクの所在の一つである。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-26

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